小学生の頃、野球が好きだった。
プロ野球中継は巨人戦ばかりだったけど、必ず観ていた。
高校野球は第一試合のプレイボールから第四試合が終わるまで、ずっとテレビの前にいた。
あの時、高校球児が別世界の立派な大人に見えていた。
高校生になったぼくは、相変わらず高校野球を観ていた。
同年代の高校生がこんなに頑張れるんだから、ぼくだって大きなことをやれると思っていた。
社会人になったぼくは、相変わらず高校野球を観ていた。
年下の高校生がこんなに頑張っているのに、ぼくは何をやっているのだろう、と思うようになった。
父親になったぼくは、高校野球を観なくなった。
子供の頃はあんなに好きだったのに。
理由はわからない
興味がなくなったのかな。
高校球児だった息子は、怪我と病で野球を断念したからだろうか。
いや、それとそれとは関係ないな。
おじさんになったぼくは、少しだけ高校野球を観をようになった。
ぼくの子供より若い子らが真剣な眼差しで戦う。
勝てば泣き、負ければ泣き、その純粋な姿に心を打たれ、そんな生き方をしてこなかった自分には羨ましく見える。
それに社会人になった長男は、草野球で優勝を目指して頑張っている。
いや、やっぱりこれは関係ないな。
老人になったぼくは、高校野球を観るのだろうか。
その頃には、ぼくを取り巻いていた邪念やしがらみが何もなくなっている。
たぶんかじりつくようにして試合を観ているんだろうな。
高校野球で人生を語れるんだな。