東京の西の郊外に調布という街があって、そこに深大寺という古刹があります。「深大寺恋物語」というのは、調布市のNPO法人が町興しの一環として起ち上げた、小説の公募事業です。小説の公募で町興し、というところがとてもユニークで、今年で20回目を迎えるのですが、諸事情により今回で終了するということです。
この公募のもう1つユニークなところは、入賞6作品の作品集が刊行されるところです。作品集といっても「書籍」というより「小冊子」といった体裁ですが、それでも自分の作品が本という形になるのは、とてもうれしい気分だと思います。
で、その作品集、巻末に最終審査員の先生方の講評が載るのですが、それがまた辛口で……。私も何度か応募するうちに運よく入賞したことがあるのですが、その時の講評はこんなふうでした。
・よくいえばほのぼの、はっきり言えばうすぼんやりした小説。
・この主人公は、べつに弥子さんじゃなくてもほかのどんな女に誘われても同じような感じになると思えます。そのために雨の中、弥子さんがあらわれるラストシーンにいまひとつ心が動かされません。
・薄ぼんやりした男女の関係を、ムードだけで薄ぼんやりと書いているので、読者の心にはほとんど何も残らない。
うーん、ああ、なるほど……。
と、もちろん私は、こうした講評を叱咤激励ととらえ、その後、研鑽に励むことになったわけですけれども(笑)。