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読書能力の発達段階

読書能力とは、読字力、語彙力、文法力、読解力、速読法、感想力などに支えられた複合的能力である。
この読書能力の発達には、読書興味の発達が関わっている。

まず、読書能力の変革期というものが3段階ある。
1、第1関門(3~4歳)本に親しませることが重要な時期。家庭や公共図書館の読み聞かせや、他のさまざまな読書に関わる行事は子供たちが本に親しむ機会となっている。
2、第2関門(小学校3~4年生)読書興味の幅を広げることが重要な時期。ブックトークと言って、ある一つのテーマに沿って、数冊の本を順序よく紹介するものがあるが、これが読書興味の幅を広げる一方法である。
3、第3関門(中学校1~2年生)読書によって内面の充実や感動を求める時期。この時期はどのような本を薦めるかが肝心である。
それぞれの関門は1、前読書期から読書入門期。2、初歩読書期から多読期。3、多読期から成熟読書期。への変革期にあたる。

次に読書能力の発達段階を述べる。
<前読書期>(~4歳)……話し言葉で通信をしている段階。文字の存在を意識し、絵本に興味を示す。
<読書入門期>(4~5歳)……読み聞かせをせがむ時期。「この字はなんという字?」などと親に尋ね、字を覚えていく。なぞなぞなどのことば遊びが好きになってくる。
<読書開始期>(5~6歳)……かなもじが全部読めるようになる時期。1字ずつの拾い読みのため、時間がかかる。今まで読んでもらっていた本を自分で読もうとする。
<初歩読書期>(独立読書開始期)(小学1年生1学期)……意味が簡単で、未知の語があまり出てこない文章を、ひとりで読み始める。速度は遅いが、読むことは楽しいことを実感する。
(読書習慣形成期)(小学1年生2~3学期)……読書の習慣がつき始める時期。語彙の量が増え、新しい言葉が出てきても、推測しながら文意をつかもうとする。文字で表現されたシーンや情景をイメージできるようになってくる。
(基礎読書能力熟成期)(小学校2~3年生)……初歩の読書技術が身につく時期。円滑な眼球運動、正確な行がえ、1回の目のとどまったときに把握できる文字数の増加などがみられる。本を終わりまで読み通すことができるようになる。また、自分の考えと比較しながら読むといった、創造的な読み方ができるようになる。
<多読期>(無差別多読期)(小学校4~5年生)……読書技術が発達し、多読になる時期。目的をもって読書できるようになる。自発的に何でも読めるが、本の選択はまだ不十分である。理解と記憶がよくなり、読みの速度も大幅にUPする。参考資料や新聞をうまく利用できるようになる。
(選択的多読期)(小学校5年生~中学校1年生)……語彙の量が飛躍的にUP。また必要にあった書物を適切に選択できるようになる。内容を評価したり、鑑賞することができる。文章の内容によって読む速度を調整できるようになる。(この段階で発達が止まる者、以後かたよった面だけが発達するものが出てくるおそれあり)
<成熟読書期>(共感的読書期)(中学校2年生~高校1年生)……共感できるものを選んで読むようになる。それに見合った書物を選び、多読の傾向は減少、かわりに共感したり、感動する本にであうと、何度も読むようになる。
(個性的読書期)(高校2年生以上)……読書の目的と、資料の種類によって適切な読書技術をもって読むことができる。成熟した読書人としての水準に達する時期。学術論文なども読むことができる。

最後に読書に期待される効果と読書の効果について述べる。
子供たちは年齢に応じたさまざまな形で書物に触れる。
幼児が絵本に触れる機会としては、ブックスタートや読み聞かせがあるが、これらは読み手と聞き手の間のコミュニケーションによって情緒の発達や言葉の発達、読書を楽しむ心理的準備状態が整うなどの効果が期待される。
具体的には、一つひとつの言葉や場面をイメージ化したり、シーンをつないで一つの物語の流れを楽しんだりすることができるということである。
読みの能力を発達させるには、聞く能力を発達させる必要があり、読み聞かせは子供たちのその後の読書にとって非常に重要である。
読書に期待される効果には、そのほか「心理的側面」以外にも「学力的側面」に関連する内容も多い。
心理的側面には、心の成長(感受性、自己形成、共感性、耐性力の高まり)や心の癒し(ストレス低減や心の落ち着き)が含まれる。
学力的側面には、学力の伸び(読解力、想像力、思考力、表現力の伸び、知識の獲得)学習意欲の伸び(集中力や好奇心の高まり)がある。
子供たちの発達に対する読書の効果に関する実証研究は少なく、今後が期待される。
研究成果としては、学力的側面において自由読書(読みたいから読む、読みたい本を読む)が読み書き能力と関係があることが示されている。
また、心理的側面においては、読書が共感性に及ぼす影響が検討されており、どのような内容を読むか、あるいは年齢や性別によって影響が異なることなどが示されている。

2000年から学校教育に段階的に導入された「総合的な学習の時間」によって、読書は楽しみのためだけではなく、図書資料やインターネットを用いた調べ学習に移行してきている。
が、小学生、中学生、高校生と年齢が上がるにつれて調べ学習に否定的なイメージが高くなっていくことが示されている。
子供たちの情報リテラシーの形成が課題である。

『児童サービス論』より。

1件のコメント

  • 水木レナ様

    このたびは拙作『走れメロス 短距離走編』に★とレビューをくださり、ありがとうございます。
    以前カクヨムの企画物に参加させていただいた際に投稿した作品でした。
    読んでいただけて嬉しかったです。

    近況ノート、読ませていただき、勉強になりました。
    今後ともよろしくお願いいたします。
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