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ゲリラ豪雨

諸事情あって前倒しで移動していた十五分きっかりで完全にゲリラ豪雨に見舞われるという地獄にあいました。
すごかった。小学生のとき軽自動車に撥ねられて華麗に着地を決めて学校の校庭までダッシュしたあのとき以来、久しぶりに宙に浮きました。風で。ガチで風のみで一センチくらいですが浮きました。引きました。
道中がまた避難できる場所がないんです。風で傘が引っくりかえること……数え切れませんでした。っていうか傘なんか投げ捨てたいくらいの雨量でズブ濡れ。でも捨てたらもっと悲惨になるの確定です。我慢です。

ようやく見つけたマンションの駐車場に避難したら後から避難してきたババアにめちゃ警戒されます。そらね、真夏にホルスタイン柄のセーター(極薄)を着てる左手四指がカラフルな輩めいた存在を見れば引くでしょうよ。先に避難してたこっちが悪かったよチクショウとババアの安心のために豪雨に出陣したんです。

ロイホの旗。ロイホの旗ですよ。デッカい看板から垂れ下がってる旗が普段は杭で地面にぶっ刺さってるんですが、それが風で抜けてるんですよ。暴風で旗が振られて銀色に輝くアルミ合金塊が眼前にぶっとんで来ました。視界がぎゅーんと狭まって銀塊の軌道と勢いを完全に把握できましたね。しゃがんで回避です。
直後、スッコーーーーーーーーーーーン!
柱に銀塊が衝突、鼓膜を破りかねない打音が生じました。

そのとき私はロイホに殴り込んで旗なんとかせえと言いつつドリンクバーで中二なカラフルドリンクを決めるべきだったんです。
ええ。
決めずに歩きました。

木々が軋み信号が揺れ、枝が弾けてぶっ飛んでくる中、目的地に到達。整理券を掴んで束の間、停電ですよ。対応してくれたおばちゃんも苦笑いってもんです。外からサイレンと雷鳴が聞こえてきます。座った椅子は汗でなく雨水でびっちょびちょです。雑巾くださいという間もなくおばちゃんは引っ込みました。まあ、いいか。

すべてを終えて外に出ると、涼し気な風が爽やかに吹き込む晴れの日でした。これこそが心底ムカつく青空って奴です。帰りの信号の一つが停電してました。でも車は普通に流れてます。世界は強い。サイレン。消防車。救急車。横倒しになったライトバン。行きに私を殺しに来たロイホの旗は厳重かつガッチガチに柱に固定されていました。

ズブ濡れのままスーパーでカキフライを買う私。絶妙な湿気と時間経過で微妙に鉄錆臭い海の味。回り始めた洗濯機。1回で6点取られた花咲徳栄。なおも満塁。一塁線ダイビングキャッチ。ファーストでヘッスラと飛び込みが交差する。タイブレーク。調子外れのサイレンと遅くて粗末な昼食。人生。

私は今日の分を書くのを諦めた。
風に嬲られた躰が傾ぐ。
洗濯機が止まった。


明日のラッキー思いつき嘘知識
『土用の丑の日があるように、川用の丑の日や山用の丑の日や海用の丑の日や食用の丑の日など、数々の丑の日がある』

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