回想編はダイジェストの美鶴視点なので、重要なシーン以外は簡略化しています。そして、真凜側の視点はありません。本来のストーリーは、真凜の視点で描かれていますので、一見すると完璧超人のようにも見えてしまいます。けれど、彼女も弓鶴=美鶴に対しての距離感に悩んでいます。
「私にできること、それは手を伸ばし続けること。彼のそばに居続けること、そして、彼に微笑みかけること。それだけしかないけれど、私の中でそれがどれほど大きな意味を持っているか、誰にもわからないだろう。彼が抱える闇の重さを少しでも軽くしてあげたい。絶望を希望に変えてほしい。それが、私の純粋な願いだから。私たちはただの相棒で、もしかしたら友達ですらないかもしれない。でも、私の中で彼は大切な存在。彼が今、どんなに大変な状況にあるのかを思うと、迷惑になりたくないっていう気持ちでいっぱいになる。だから、今はこれでいい。少しずつでも、彼との距離が縮まることを願いながら、そばにいる。それだけで幸せだと思っている」
そして、美鶴の方は言わずもがなで、彼女を意識しつつも、それを否定したい自分がいます。巻き込んでしまったことと解呪の為の道具として使っている事への後ろめたさ。今の自分が弟に憑依しているだけの仮初の命であること。彼女が見ているのは弟であって自分ではないこと。そして、解呪を成したら自分は消えるしかないこと。
そんな二人がどうやって近づいていくのか。ほんの数センチですら遠い。そんなじれったい話です。