あらゆるものの名付けに、食べ物を用いることが多い。それは食べ物が好き、食べることが好き、ということでは決してなく、語感や食べ物の見た目が可愛らしいか否かによる。わたし自身は、食べることは苦手だし、好きではない。空腹がなければ、食べることさえ厭うているようにも思う。
親しいひとが、おおむね、食べることが好きである。食べ物が好きなのかもしれない。わたしのように、かわいいからとか、そういう理由のみではなくて、食べ物や食べることそのものを愛しているように思う。不思議な感覚である。きっとわたしがそれを自分のものとしてわかることはないのではないか、とすら思ったりもする。食べることと、食べ物を好きでいるひとのことを好ましく思うようになっても、わたしの食べ物や食べることへの感覚はずっと遠いままだ。
むかし、パフェを食べることを好きなような振る舞っていたことがある。オレンジジュースとかを好きそうにしていたこともある。それはわたしがそういうキャラクターだったからで、そう見せたかったからだ。わたしがおいしそうにものを食べることを、そのひとは、どこかやさしく見ていた。食べることは、そのひとをゴミカスネオンの東京の街から連れ出すことと同義だったので、わたしは必死においしそうな、評判の良さそうな、そのひととわたしがふたりで食事をしていても平気そうな場所を、毎週探していた。
そういう日々が過ぎ去って、やはり食べ物と食べること自体はあまり好きではないなと自認するようになった。そして、好きな食べ物を聞かれるようになってから思うのは、食べるという行為は手っ取り早く時間を共有することなのだな、ということだった。わたしはかつて一緒にごはんを食べたかったひとと、ただ、時間の共有をしたかっただけだったのだ。はやく帰りたくなかっただけだったのだ。そしてきっと、わたしは食べることが好きな人間なのだ、と思わせることで、そのひとの時間をうばう自覚から、逃げていただけだった。
好きな食べ物は、ほとんど、ない。
プリンとりんごは好きだ。どこの、何を食べても基本的にはだいじょうぶだから。日持ちもするし。
ほかの甘いものはものを選ぶ。たとえば、わたしはじつはワッフルがそれなりに好きだが、完食できなさそうなワッフルもあるので。
オムライスとカレーは体調による。カレーは、自分で作ったものがいちばんよく食べられるな、と思う。
卵焼きも好きだ。プリンやりんごよりも日持ちはしないが、基本的には食べられる。
食べられる、られない、で選んでいるあたり、食べ物と食べることにたいする答えは出ているようなものだった。
……なんか、なんだろう、なにを言いたかったんだっけ。なんか、えっと……さいきんたくさん食べ物をもらうのが結構苦痛です、くらいのことだと思います。カクヨムと作品にはいっさい関係がなく、わたしの仕事上の話でした。何キャラでいればいいのかな。わたしって何が好きそう?