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1貫は何円か

白狐姫と白狐隊さんから拙著「武田信玄諸戦録」にいただいたコメントをきっかけに、ふと思い立って色々調べてみました。
まず正親町天皇譲位と後陽成天皇即位にかかった費用が1万貫(『宇野主水日記』)。
時代はとんで、上皇陛下から天皇陛下への皇位継承関連費用は166億円。このうち50億円は外国要人の接遇費であり、天正期には不必要な費用だったと考えて差し引くと、単純にあてはめて正親町天皇→後陽成天皇への皇位継承式典に要した費用は116億円相当だったということになります。
よく1貫=8万円とか10万円と言われますが、上の事例から導き出されるのは1貫=116万円という数字です。
さて元亀三年の西上作戦に際して武田家がかき集めた軍資金は7千両(2万8000貫)だったそうですから、1貫=116万円とすると7千両=324億円。これを引率していた軍勢2万7000人で割ると、一人につき120万円支給されたことになります。さらにこの120万円を出征期間6ヶ月で割れば、月あたりの支給額は20万円。
ご存知のとおり武田の軍役衆には既に知行が宛がわれているので、この20万円は月給ではなく「出征中の特別手当」とでもいうべきものになります。

ただし『宇野主水日記』にいう即位費1万貫という話は、当時の噂話を書き記したに過ぎず根拠が不明、また武田家は上洛途上で7千両を全額使い果たしたのか、或いはいくらか持ち越すことができたのか、そこらへんも今となっては分かりませんし、京目田舎目も度外視して計算してますから、上の数字は一種の与太話ということになりますが、しかしそれにしても「出征中の特別手当が月に20万円」とは、なんだか妙にリアルな数字が出てきたものです。
これはもう1貫=116万円で良いのでは!?

2件のコメント

  • 面白い考察ですね。現代と戦国時代では物資や人命の価値も違うので単純計算も比較も難しいですよね。現代の皇室の式典費用も妥当なのか庶民には判断し難いモノがあります。
    数十年後、数百年後、さらに価値観が変化していくのでしょうね。
  • コメントありがとうございます。
    いまの私たちが常識と考えていることも、記録に残しておかなければ数十年、数百年後には歴史学上の謎になってしまうということですね。
    室町戦国期、金儲けは下賤の仕事でした。だから為政者層の記録からは、物価や貨幣価値に関する記録がすっぽり抜け落ちてる。
    平成令和期の日本政治史を研究する数百年後の研究者は、逆に
    「この時代の政治家は金の話ばっかりしている。大事なことが何も分からない」
    と嘆くかもしれませんね。

    最後になりましたが、拙作をいつも読んでいただいて本当にありがとうございます。励みになってます。
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