僕が子供の頃には、シルクハットの怪人がいた。
夕方5時になると、拡声器からはチャイムが流れる。
地域によっては、夕焼け小焼けや、カラスなぜ鳴くののメロディ……
なんとなく物悲しい、そんな時がシルクハット怪人が活動を開始するときだった。
友達と遊んで家に帰る道すがら、狭い路地の一つ一つに怪人が潜んでいて、その角をから不意に怪人が目の前に飛んで出てきそうで、ドキドキしながらそこを駆け抜けたものだった。
怪人の中には、僕たち子供をさらって異世界につれていく悪いやつもいたし、「君を待っていたんだ。一緒に闘ってくれるね」という、世界を救う系の良い怪人もいた。どっちも今にも目の前に出てきそうだった。
今、現在――
その夕方の頃には、目の前に日能研のNの字のバッグを下げた子供たちが、沢山塾に向かって歩いていく。それなりに楽しそうだ。
この子たちの前には、今もシルクハットの怪人は現れるのだろうか?
突如、巻き込まれてしまう身も凍るような怪事件や、わが身を捨てて闘わなけれなならない人類の危機は、この子たちの身に降りかかるのだろうか?
他方、今も僕の目の前には、暗い路地が幾つもある。
夕方になると、決まってそれらは大きな口を開けて僕を狙っている。
そんな話を書きたい。
謎につつまれた、シルクハットの怪人を描きたい。
活き活きと。
妄想?
結構!