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あとがき『武装メイドに魔法は要らないII』

ご無沙汰しております。忍野佐輔です。

『メイドin異世界《ファンタジア》』の書籍化作品である、
『武装メイドに魔法は要らないⅡ』の発売から一週間が経ちました。

どうでしょう……?
お楽しみ頂けましたでしょうか?

もし少しでも有意義な時間をお届け出来たのなら幸いです。
これからもマリナとエリザの二人の事をよろしくお願いします。

さて、
読了された方はご存知かと思いますが、
2巻のあとがきは、あとがきではありませんでしたので、
ここで改めてあとがきを書かせて頂きます。

ガッツリネタバレしますので、
未読の方はブラウザバックして頂けますと幸いです。
(コメント欄にもネタバレ含む解説が入ります)



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では改めまして、
『武装メイドに魔法は要らないⅡ』をお読み頂きありがとうございました。

●『執筆の振り返り』
正直、執筆は大変でした……。
本業との両立はもちろんのこと、
1巻からオチを変えたことやページ数制限がありましたので、
WEB版から構成を大きく変更する必要性が出てきましたので。

とはいえ、
WEB版とまったく整合性の取れない内容にはしたくありませんでしたので、
WEB版プロット4~7話(4話分600ページ相当)分の情報を、
300ページ以内に収めようとしたんですね。

――無茶ですよね。

その結果として、あの構成となりました。

自分としては出来うる限りのことをさせて頂いたつもりですが、お楽しみ頂けるのか、正直不安でした。

発売から一週間経った今、
『面白かった』という感想をある程度頂けたので、ものすごくホッとしているところです。

(と、同時に厳しいご意見も頂いておりますので、そちらも真摯に受け止めております)


●2巻のテーマについて
エリザが1~3話で語っていた
『不幸になりたいと泣き喚いていても、むりやりにでも幸せにしたい』
という言葉。

2巻では
「それってどういう事なのかな?」
と掘り下げることをテーマとさせて頂きました。

自己の不幸を願う。
これは
『自己嫌悪が過ぎて自身の不幸を願う』事もあれば、
そうでなくても何らかの理由で
『自身にとって不利益となる行動を採らざるを得ない』
考え方も含まれると思います。
無論、他にも様々な理由があると思いますが、本作では特に上記二点の掘り下げることに致しました。

そうした意味で仲村マリナの過去を掘り下げ、ペトリナやヒロトというキャラクターについて描くことになりました。

ちなみに
ヒロトはもちろんのことペトリナもWEB版のプロット上にも存在します。
やはり家族を喪い『復讐騎』となるキャラクターです。
WEB版のプロット上だと復讐心を抱く対象は皇帝ではないのですがキャラクター構築中に、
「あまりに救いが無いな」と思い、
書籍側で救済措置を採りました。

●深山サチについて
正直に申しますと、
自分で書いていて深山サチ周辺のストーリーはキツかったです。
「作者が何言ってんだ。お前が原因だろ」
と思われるかもしれません。
ですので僕からのコメントは差し控えさせて頂きます。

が、例の見開きシーンを書き終えた後

〜『武装メイドル☆マリリン』とその追っかけ小学生の深山サチが、親のカードで高額スパチャをしてしまった所から始まる現パロ妄想〜
をしてから続きを書かねばならない程度にはダメージ受けてました。
(なんでその現パロ妄想を途中でやめたかと言うと、サチがアイドル応援うちわを作ってる所で
『こっちを見て!』
『あたしを撃ち抜いて!』
って文字を書いてる所を想像してダメージを受けたからです)


●『WEB版との相違点について』
双方をお読みの方はご理解頂いていると思いますが、
ここでWEB版との相違点を整理したいと思います。

初期条件が異なっているため、
キャラクターの行動やストーリー展開が変わってしまったとご理解頂ければと思います。

・仲村マリナについて
魂魄人形の素体がWEB版とは異なっています。
WEB版では『明星の印』書籍版では『塊鉄炉の印』の棺から生まれ、
WEB版ではリーゼが作ったものですが、書籍版ではその由来が判明していません。
それ故かどうなのかマリナの外見が『丸眼鏡』から『片眼鏡』になっています。
(年齢もWEB版より若いですしね)

もちろん書籍化においての都合でもあったのですが、ただの『都合』で終わらせたくないので、WEB版プロットと睨めっこしながら理由付けをさせて頂いております。


・エリザについて
基本的には変わっていませんが、
書籍版ではマリナが一時期意識不明のまま一ヶ月放置されたことで、
書籍版の方がメンタリティの成長があります。
(――というよりは彼女の思い込みかもしれませんが)

また、父親と兄二人については設定を変更しておりません。
ちなみにエリザとペトリナの家族構成が似ているのは、WEB版で二人を対比するつもりだったためです。
(WEB版のペトリナはもっと救いのない状態になるので)


・ヒロトについて
WEB版と異なりアトロもケイトも一緒にいませんでした。
これは、彼女らは空路と海路の偽の護送作戦へ参加している設定です。

まあ、彼女らが一緒にいると複体幻魔ごとき瞬殺ですからね……。
逆に彼女らが居ないからこそ、複体幻魔が直接乗り込んで来たというわけです。

他、書籍版で明かされた設定は概ねWEB版と共通のものです。
(WEB版でもヒロトは星読みの瞳を持っていますし、だからこそアトロが一緒にいて『すべて終わったら殺してやる』と言い聞かせているわけです)

そのあたり、早く書き上げてしまいたいです。

また王都へ向かう方法や展開が変化した理由としては
・マリナの素体が『塊鉄炉』のものであったために一ヶ月間昏睡した。
・一ヶ月昏睡していたが故に、
ヒロトの『星読みの瞳』に映るバッドエンドの種類が変化して、王都へ向かう時期や方法も変化した。
・方法が変化したために、複体幻魔が採った作戦も変化した。

という流れとなっています。
ヒロト自身、アトロやケイトという『全ての事情を知っている者』が居ないのでだいぶ態度や言動が違いますね。
(もっと言うと、ヒロトが選択するルートがもっと前の段階から変わっているので、WEB版ではペトリナの父であるニキアスはまだ生きています)

というように忍野的には考えているので、WEB版を無かったことにするつもりはないです。


・ダリウスについて
彼については秘密です。
『お前、憂国士族団のことはどうした?』
みたいなのは続刊すれば書くつもりです。
(なおWEB版でも再登場予定ですが書籍版のように活躍するかは微妙)


・リーゼ、シャルル、ファフナーについて
リーゼはWEB版よりも大人びた感じに書かせて頂きました。
WEB版と設定は変更していませんが、マリナの身体の制作者ではない事などから、マリナへの距離感を変えて描写させて頂いております。

今後も書籍版が続くようなら、
ちょっと子供っぽいお調子者な側面のあるリーゼも描けるとは思います。
(あんまり子爵然とした態度で無理させるのも可哀想ですし)

シャルル陛下についてはWEB版でリーゼが『合成獣みたいな男』と称したように、状況や相手に応じて態度や空気感を変える人間ですので、
書籍版では『筋肉モリモリマッチョの変態』という感じで登場しました。
(宰相のガンドルプスは3巻が書ければ登場予定です)

ファフナーは特に書籍版とWEB版で何も変えなかったと思います。
(現状だとWEB版でもそこまで描写多くないですしね)


なお、王都の名称は『ロマニア』から『ロムルシア』にWEB版ともども変更します。
書籍化すると英字にした時の綴りを考えなくてはいけないのですが、ロマニアだと『ルーマニア』と同じ綴りになっちゃうので……
(多分、書籍版に合わせて設定を変えるのはここだかだと思います)


●3巻以降について
何度か書いたかもしれませんが、
『武装メイドに魔法は要らない』シリーズは8巻(24話)構成で考えております。
(WEB版は48話構成で考えてましたが書籍でそれは流石に長いので)

3巻〜4巻は物語前半での重大なイベントが起こる構成にしているため、頑張って書き上げたいと思います。
楽しんでもらえるように全力で頑張ります……!

出したい武器も色々あるのですが(IWS2000とか)3〜4巻(WEB版8〜13話)は敵がちょっと強めなので、なかなか難しいところです。

なお、
『全8巻構成』という点については担当さんにもお話ししております。一応「忍野の印税率を減らして続刊確率上げられたりしないか」みたいに相談もしましたが、まあ、一冊出すのに数百から一千万円は動くライトノベル。そう簡単な話ではありませんでした(苦笑)。

できる限り余計な経費がかからないように忍野の側で色々請け負って、続刊しやすくかるよう努力はさせて頂いていますが、もしもの事はどうしても起こります。

その時にはカクヨムで3巻の原稿を公開させて頂きますので、どうかご容赦ください。

●お礼
ブックメーターや各種通販サイト等でのレビューはとてもありがたいです。
本当にありがとうございます。
(編集さんとの打ち合わせや交渉材料にもなりますし、なにより「レビューを見て一巻から買ってみた」という方も見かけますので、めっちゃありがたいんです)

あとKADOKAWAのお問い合わせフォームから感想と続刊の要望を送ってくださった方もいらっしゃいました。
アレも本当にありがたいですし、何より名指しで感想を頂けるのが嬉しいです。
編集部に届くまでタイムラグがめっちゃ大きいのが難点ではありますが……(苦笑)


●余談
色々ありまして2巻のカバー裏のあらすじや特設サイトの文言、キャッチコピー等の作成を忍野の方で担当させて頂いております。
もし『ここが変だよ』とか『ここが良かったよ』等ありましたら、
こっそり教えてくれると助かります。(苦笑)

コミカライズの監修もあり作業が増えてしまいましたので、勉強にはなるのですが徹夜も増えてしまいました……。
(新しいサプリがよく効くので何とか書けてます)

諸先輩方はどうやって執筆時間を確保しておられるのか……。
コロナ禍が落ち着いたら根掘り葉掘り聞いてみたいと思います。


最後に、
2巻の刊行が遅くなったことについてお詫び申し上げます。
誠に申し訳ありませんでした。

お話しできる範囲で事情を説明しますと、続刊の決定が遅くなった関係で担当様から
『最短で刊行は七ヶ月後になる』
とのお話しがありました。
(ここの詳細はお話しできないのですが諸々のスケジュール調整のためとご理解ください)。

ここで忍野が
『どうせ出るのが遅くなるなら、
きっちりWEB版と整合性の取れるものを書こう』
と考えたのが全ての原因です。

上述の通り4~7話(4話分600ページ相当)分の情報を、
300ページ以内に収めようとしたんです。

原稿的には七ヶ月+二ヶ月後に出せる流れでしたが出版スケジュール上もう一ヶ月延びて、
結果、2022年の発売になってしまいました。

読者の皆様を大変お待たせしたこと、誠に申し訳ございません。
お叱りに近いご意見ご感想もありました。ごもっともな事と受け止めております。
重ねてお詫び申し上げます。

なお、
3巻ではWEB版のシリーズ構成上8~10話(400P相当)になります。
もし出せることになれば、2巻のような事は無いかと思います。
あとは単純に、続刊決定が早ければ――といった感じです。


もし、2巻についてのご意見、ご感想、ご質問等ありましたらコメント欄に頂ければ回答致します。
冒頭で未読の方はブラバして貰うように書きましたので、ネタバレ含む内容でも構いません。

それでは、
これからもマリナとエリザの事をよろしくお願い致します。

1件のコメント

  • こちらでTwitterで頂いた質問に回答致します。


    >>>
    翼人種の羽は定期的に生え変わるのでしょうか?
    成長していくごとに羽も大きくなっていったりするのかなと妄想してました。

    それから、ペトリナは最終戦でもカエルの涎まみれのままだったのでしょうか?
    >>>


    翼人にも換羽期がありますので、年に二回ほど下毛を含めて抜け変わります。

    そう言う時期は翼や耳の羽の当たりがずっと痒くて、彼ら彼女らは割とイライラしてます。

    ペトリナもきっと痒くて痒くて「うがぁッ!」となっている事でしょう。


    なお最終決戦前に軽く羽と身体は拭いています(ダリウスが気を使って、タオルとか用意してくれたので)。
    ただお風呂に入る余裕はなかったので一部の羽はガビガビしてると思います(苦笑)


    ちなみに、
    本編中に「翼人種は魔導反応を出さず飛べる」と軽く触れましたが、これは世界の側に『翼人は翼を使って飛ぶ』というように法則として記載されている為で、空力的なものを使って飛んではいません。
    なので極端に羽が欠損したりしない限り、彼ら彼女らは多少汚れているくらいならば十全に空を飛ぶことができます。
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