朝起きた時、窓を開けなくとも今日が雨なのかどうかが分かる。雨の日はつま先からつむじまで全身が曇っている。気怠いとか重いとかそういう感覚と似て非なるもの。空なんか見なくとも、自分の体を見れば薄暗いどんよりとした雨雲がはっきりと見える。こういった日はまず今日という一日に託していたあらゆる希望を捨てる覚悟をしなければならない。
しかし、そんな覚悟を持てた日など21年生きてきて一度もない。大抵は一日中無駄なあがきを続けてボロボロに惨敗した後、苦虫かみしめながら寝ることになるのだ。
悪あがき①
大体11時ごろ布団から出て体中の雨雲を洗い流そうと風呂場に行く。しかし、雨雲だらけの体で出来ることなど、前日に溜めた湯船を温めなおすために追い焚きボタンを押すだけである。洗濯機に寄りかかって待ってる間に、段々と考えが曇ってきて、もう服を脱ぐことさえしたくなくなるのである。
悪あがき②
そうして、12時ごろ食卓に座る。そうか!外側から洗い流せないなら内側から雨雲を晴らせばいいのでないか!と閃く。当然何度も試みてきたことなのに毎度毎度結果を忘れてしまう。懐事情が頭によぎる前にUberEatsを開いておいしそうなインドカレーとチーズナンを頼む。20分ぐらい待てば今の自分とは正反対の陽気なインド人が原付に乗ってやってくる。「イツモ、アリガトウゴザイマス」この言葉がインドカレーをより美味しくさせる。パクパクと食べておなか一杯になると、当然っちゃ当然だが体中の雨雲は晴れるどころか、エネルギーをたくわけ雷雨振りまく嵐のようになる。さぁ、再び布団に入る時間だ。
悪あがき③
一時間ほど、布団の中で豪雨に打ちひしがれた後「これではいかん」と立ち上がりリビングに戻る。そこで思いつくのは最も愚かな悪あがきであるゲームである。ゲームをすれば気分が晴れるかもしれない!結果は分かっているのにどうしてこうも毎回これを考えてしまうのか。パソコンを起動して大好きなレトロシューティングゲームを開く。同時に音楽配信サイトも開きデスメタルを流す。この時、確かに体中が晴れ渡る。お日様はキラキラと輝き、さっきまでの豪雨が嘘みたいな気分になってくる。しかし!!これは文字通り嵐の前の静けさである。やがて目が疲れ、肩が岩のように固くなり、ゲームを落とした瞬間!信じられないような稲妻が自分の体を貫き、もう指一本動かすことさえできないほどの倦怠感を与えるのだ。
そうして雨の日は終わっていく。上記以外にも、コメディー映画、炭酸ジュース、たばこ、散歩、アルコール、お菓子バク食い、筋トレなど悪あがきは無数にあるが、もちろんどれも雨雲にまかれておしまいである。