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共喰い

「食べるものが体を作るんだから栄養あるものを食べなさい」が母の口癖、とまではいかないがよく言う言葉だった。その影響で昔から食事があまり好きになれなかった。なんとなく共喰いのような感覚を覚えてしまう。「体になるものを食べている」のと「体を食べている」の違いがよくわからなかった。体の中でぐにゃぐにゃと変形して気がつかない間に僕の体に取り憑いてしまうことを考えると、味、匂い、見た目でいくら誤魔化そうたってそうやすやすと食べるわけにはいかない。時には、そのまま内蔵のような見た目の料理もある。むしろそのほうが、体に入れた時に何になるのかが分かりやすくって安心して食べれた。もちろん、そのまま臓器として体の中で機能するわけではないが。あくまで子供の時の話。今は立派な食人族。昔の感覚が残っていないわけではないが、慣れてしまえばなんともないことだ。共喰いなんて。

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