多摩川の上流、と言っても奥多摩からはまだまだ遠い調布付近にお気に入りのスポットがある。
バイトの休憩時間にそこへ行き、コンビニで買った小さな袋の、そしてそのほとんどが空気でパンパンのお菓子を食べるのが「生き甲斐」という言葉に引けを取らないほど好きだった。
ピーヒョロロロロ、ザージャー、チュルチュルチュルチュル、ザージャー、カァクワァ、ピーヒョロロロロ、ピピピンピピピン。心地よい喧騒。誰も狙ったような音を出していない。ただ当たり前に出る音が美しいだけ。
ある日、私も一つ音を加えてみたことがある。
薄汚れた親指と人差し指のゲートをパカっと開けると、硬くコーティングされたチョコレート菓子が石の声真似して落ちていく。チャポン。いや、チャッポンだったか、チョポンだったかもしれないし、実際は音などせず僕の脳内だけで自動生成したSEかもしれない。最近流行りの自動生成。
あまりいい音は鳴らなかったけど、せっかくだから海へと続く旅を楽しんでもらいたい。
罪悪感だけが少し残った。