福山典雅さん、ありがとうございます！！！
嬉しいにゃっ！
＊＊近況ノートへの書き込み＊＊＊
「名探偵みゃ！」
私は猫だ。名は「みゃ！」と言う。近頃、友人のくろから「みゃー、にゃう、みゃみゃ、ふにゃー！」と訴えられ、そのおかしな家の調査に来たのだ。
その家には主（影の）であるしまこさんと、長男くん次男くんがいた。ふむ、随分楽しそうだ。アマプラをかけっぱなしだな。おいおい、大丈夫か？ むっ、「転スラ」だと！ 新シーズンか、めっちゃ面白いじゃないか！ ディアブロ、好きだ。ぬっ、「ハイキュー！」が終わってしまったじゃないか。続きを早く見せろ！ さ、いますぐTSUTAYAに行くんだ！ ゴーだ、ゴー！
……はっ！ いかんいかん、私は興奮した意識を覚ます様に、頭を数回振りすぐに冷静さを取り戻した、ふ～、仕事をしなければ。
さて、くろからの依頼だと本当はこの家には主（表向き）のご主人がいるらしい。だが、既にここ数日その姿が全く見えないという。だから、くろは何かおかしいと感じたのだ。さらにしまこさんのはしゃぎようが異常らしい。くろ曰く「これはもしかして、事件性のものかもしれないにゃ！」と早計にも騒いでいたのだ。
早合点な奴らしい言葉だ。今回は古くからの仲良き友人の、大袈裟な誤解を解く事が、名探偵である私の主な仕事となる。
冷静さを取り戻した私は、早速注意深く家屋の中や、彼女達の言動をつぶさに観察してみた。ふむ、特におかしな点はない……、ないのだが、何かの小さな違和感を私は感じた。そう、不審な点など一切ないのだが、私の意識が何かの様々なささいな因子を拾い、そしてそれらを整合しようと試みている。そんな時だった。
「ごはんを炊かなくていい、くふふふ（BYしまこ）」
あああああ、なんて事だ。
私は瞬時に全てを理解してしまった。すまないくろ。
それは、あまりに、あまりに恐ろしい言葉、いや告白だった。
そうか、そうだったのか……。
ご飯とは古来「召す」の連用形が名詞に変化し「召し」になった言葉だ。さらに炊くは焚くという表現を用いれば、その文字には「燃え立つ炎」という意味が隠されている。
つまり様々な小説で、その古語に関する莫大な知識を要する彼女は、無意識下で日常に使う言葉に秘め、暗にすべてを告白していたのだ。
「メス（召す）として常日頃からイライラした燃え立つ炎の様な感情を、もう起こさなくていい」
これは、つまり、いや、まさか……。
震え、慄く私が、ある重大な結論に到達した瞬間だった。
「あれ、みかけない子だ？ ふふふ、ちょっと待っててね」
私を見つけたしまこさんは、すぐにくろ達が言う「命の水」を目の前に置いてくれた。
「みゃあぁあああ」
ああ、なんておいしいんだ、最高だ！
「ふふふ、おいしい？」
「みゃ！」
……こうして私は容易く買収された。義理堅い私はこの謎の秘密を墓場まで持って行く事を心に強く誓ったのだった、にゃ！
＊＊＊
「名探偵みゃ！ その②」 西しまこ
「あのね、命の水の他に、なんとチュールがあるにゃよ！ 食べる？」
陰の実力者であるしまこさんは、何やら細長いものを見せて来た。
「……みゃ？」
「おいしいにゃよ！」
しまこさんは上のところをちょっと切った。
ああああああ！ なんか、心を全部持って行かれそうな匂いがするっ。
なんですか、この匂いっ！
「くろも大好きにゃよ、おいで」
私はふらふらと、そのちゅーるとやらに吸い寄せられた。
ぺろ。
ちょっと舐めてみた。
！！！
おいしいっ。何だこの、新食感っ！
私は夢中でぺろぺろ舐めた。おいしおいしいおいしい！！！
「ああ、ちょ、ちょっと待ってね。絞り出すから」
ああ、まだ舐めたいです！ ぺしっ。
「ぺしってやると、痛いよ。……左手でぺしってするんだ。やっぱり猫は左利きなんだなあ。晴れ。さんが言ったとおりだ」
しまこさんは何やら訳の分からないことをつぶやいた。
それより、はやくくれくれ！ ちゅーる！
ふう……。
あれ、私は何か大事なことを考えていたところだったんだけどなあ。
燃え立つ炎
という言葉がふいに浮かんだ。
あれ、何だったかなあ？ ……まあいいや。
リビングをひょいと覗くと、なんだかいろいろな物が積まれていた。
「今ね、しまこルームを作るために、不要物をどんどん捨てているんだよ！
要らないものは、ぜーんぶ、捨てちゃうにゃよ。くふふふふふ」
……笑いが不穏だったのは気のせいだろうか？
しまこさんがにっこり笑いながら、新しいチュールを見せてきた。
は！
まさか、もう一本もらえるのですかあああああ！！！！
こうして私は、命の水で誓いを立て、チュールで記憶を抹消し、
しまこさんちの通い猫になることを決意したのである。