『4話 消えていく日記』
「忘れているというよりも、まるで、最初から存在していなかったような感じで、消えてしまっていたんです。私の記憶からも、皆の記憶からも」
「だから、姫花はこの世界がおかしいと思ったんだね」
こくり、と姫花が頷く。
「それに、その仲が良かったらしい人から、お揃いで貰ったって日記に書いてあったキーホルダーは確かに私の部屋に存在していたから……」
僕は姫花の鞄についていた、幼い女の子向けのキーホルダーを思い出した。きっと、あれがその『存在しない誰か』から貰ったものなのだろう。日焼けにより色も薄くなっているキーホルダーからは、姫花が大切にしていたのだということが伺えた。
姫花は寂しげな表情で、囁くように呟いた。
「この、キーホルダーだけが、その人が存在した事を覚えているの。……私だけが覚えていないだけなら、私が忘れてるだけかもしれない。だけど、誰も覚えていないなら……」
姫花がぎゅっと、キーホルダーを握りしめた。
「それは、世界がおかしいんだって思うの」
そう言った姫花は、真っ直ぐとこの世界を見据えていた。
※ animeAIdrawing というアプリで作成したAIイラストになります。
※4話より、ヒロインの姫花とキーホルダーのくまの挿絵になります。