すめらぎひよこ先生が送る、第27回スニーカー大賞《大賞》受賞作。
五人の少女が異世界に転生し、魔王を倒すために冒険する物語――とだけ聞けば、テンプレの異世界転生モノでしかないのだが、この選ばれた少女達が異端も異端。放火魔、マッドサイエンティスト、暗殺者、機械生命体、生体兵器……その誰もが倫理観が外れており、そんな奴等が好き勝手に暴れ散らかすドタバタコメディなのである。
作中では基本的に自称一般人であるホムラを中心に描かれているのだが、各メディアで語られている放火魔の一面は、意外なことに本編では鳴りを潜めている。……というのも、プロローグでさらりと魔王城を燃やした後に語られる本編は、世界に来たばかりの過去編――彼女の狂った一面が開花する前だからである。
なので、発火能力を持ってこそいるものの、基本的に彼女は一般人寄りの視点ではあるのだが……まぁいかれた仲間達のノリに順応し、なんだったら彼女自身も結構ノリノリな時点で、最初からそっち側の人間であるのは違いない。
基本的にマッドサイエンティストのサイコがノリノリで場をかき乱し、ホムラがツッコミを入れる(※尚、ブレーキはかけない模様)ことで話が展開されてゆくのだが、これがまぁ軽快で非常に面白い。そこにさらにジンを始めとした他のキャラクターが加わることで、コメディとして凄まじい化学反応を巻き起こしているのである。
そんな彼女達の強すぎる個性のせいで薄れがちだが、描かれるストーリーは『魔王を倒す』『世界を救う』と王道も王道。だがそこに、『ただし過程は問わない』という自己解釈が付け加わることで、最初の名目の下いかれた連中がやりたい放題している。
というか十中八九、血なまぐさい展開になるのは大体こいつらのせいである。しかも人を殺しても罪悪感がないから、余計にたちが悪い。たちが悪いからこそ、そんな自分勝手な正義に振り切った彼女達の旅路は、めちゃくちゃに面白いのである。
時折ヘビーでシリアスな展開もあれど、それらをまとめて吹き飛ばすようなキャラクター達は、きっと笑いなしでは語れない。
強烈なまでに面白いコメディを求めている人にはオススメの一冊。是非一度読んでみて欲しい。私は最後まで楽しめました。