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小説でないものが最も小説らしい

カクヨムは読む人のサイトである以上に書く人のサイトですから、わたしがここに書く想いの毛ほどでもお汲みいただけたらと思うんです

わたしが最も小説らしいと感じる文章は小説ではありませんでした

学術書の、あとがきです

ある精神科の医師の方の絶筆です

腹腔にできた拳大の腫瘍が全身に転移して、最期は目も見えず、聴力も奪われ、次第に脳細胞も死滅していく

そういう中で口述筆記で書かれた、ココロからの文章

ほんとうのことが溢れていました

ご自身も今で言えばコミュ症で苦しまれたこと、不妊治療を重ねてようやく生まれたお子様が数日でお亡くなりになったこと、そのお子様が生きた証を残したいと亡くなったその姿を泣きたい気持ちを堪えてスケッチなさったこと

口述筆記で、抗がん剤の副作用にも耐えながらの執筆ですからプロットも構成も何もなかったでしょう

生きたそのままのほんとうのことをココロのままに編集者の方が手にする録音機のマイクに向かって掠れる声で語っていく

ただそれだけ

明日目を閉じているかも知れないわけですから作為もなにもないでしょう

カクヨムさんには数多の小説が投稿されています

わたし自身がそうであるように、皆さんも「ほんとうのこと」を書けるように、仕事をしながら、介護をしながら、あるいは闘病しながら、学業をしながら執筆されていることと思います

そうありたいですしそうあって欲しいとわたしはココロからそう思ってこの絶筆のような小説に毛ほどでも近づけるように書いています

2件のコメント

  • ナカモトさんらしい想いですね。

    その方は、最後に心の内を全て残していったんだなあ。
  • ありがとうございます!
    その方の最期の日々は現実にはとても苦しいものだったでしょうけれども、執筆することを、「人間としての自由を選び続けたのだ」と言っておられました。
    わたしもそうありたいです。
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