こんにちは、お疲れ様です。いつも読んでいただき、本当にありがとうございます。お陰様を持ちまして無事、『Brave Week Online』が完結いたしました。本作は初稿のタイムスタンプが2009年になってまして、かなり昔の作品です。新人賞への応募時代のもので、生まれて初めて富士見ファンタジア文庫さんの賞で一次選考を通ったのを覚えています。また、自分にとってもターニングポイントになった原稿ですね。
かつて、ライトノベルなどという言葉がなかった時代…電撃小説大賞ではなく、電撃ゲーム小説大賞だった時代。ロードス島戦記やブギーポップは笑わない、他にも無数のヤングアダルト向け名作小説がありました。それらは、純粋に文章媒体でのドキドキとワクワクを少年少女に与えていたと思います。
今、ライトノベルと呼ばれるようになったこのジャンルは、需要に対して供給過多であるため、短い賞味期限で消費されるコンテンツになってしまいました。出版業界の不景気もあって、冒険的な野心作は影を潜め、似たようなフォーマットによるリスクヘッジ優先の作品が増えたように思います。そうした中で、美少女の露出やラッキースケベ等のサービスシーンが、物語の必然とは関係なく用いられるようになりました。ライトノベルは小説(NOVEL)でありながら、文章表現以外の要素が売上を決めるという、歪なコンテンツになってしまったのです。
そうした商業第一主義に関しては、なんら失望も憤りも感じません。事業として、商売としての出版を見れば、どうしても今の御時世では小さくまとまらざるを得ない実態があるからです。そうした中で、多くの方々が努力し、利益をあげてコストを抑えるために働いています。その中でどうしても切り捨てねばならぬ不安材料や負債、非生産性に対して、なにも無感情にスナック感覚で切り捨てている訳ではないでしょう。
しかし、商売である以上、しかたがないことです。
そうした中で、ヤングアダルト向け小説の原点に立ち返りたい、そう思いました。
えっちなシーンも大好きだけど、どうせなら作品内の必然であって欲しい。
えっちなシーンを通じて、ちゃんとキャラや物語を繋げていける作りにしたい。
肌色の露出やイラスト、メディアミックスといった要素と別に…文章で表現する物語で直接、今の少年少女に伝えたいことがある。語りたいことがある。そう思った時、この作品を思い出しました。因みにこの作品が生まれた年、偶然にもあの名作『ソードアート・オンライン』が世に出ています。そこからちょっとしたMMOでのデスゲームモノが流行った気がしますし、自分も書いたことは記憶に新しいですね。
自分がかつて所属していたレーベルで、受賞パーティに出た時にこんなことを言われたことがあります。名も知らぬ同レーベルの編集者さんに「以前、ネットゲームの作品も弊社に応募されてませんでしたか?」と。富士見ファンタジア文庫さんの二次選考で落ちたあと、色々なところに応募したので、多分こちらにも送っていたと思います。その方はこの作品を覚えててくださってて、『最後がとても綺麗な作品で、いいセリフで、よく覚えてます』と仰ってくれた。それは、自分が短い商業作家生活の中で、唯一人から褒められた瞬間だったかもしれません。今も時々、その方の言葉を思い出します。そういった意味でも、特別な作品ですね。
自分なりに健全なドキドキとワクワクを凝縮して書いたつもりだし、今のSNS全盛の時代だからこそ、子供たちに読んで欲しい気がしました。