「突然だけどさ、『老害の害は障害の害なんだよね。ところであなたの性格を、害を用いて表すなら害虫だよね』」
「初っ端から悪口かよ」
「…を外国人に伝えるにはどんな翻訳になるかな
「外国人にケンカふっかけるなよ。もっと楽しいシミュレーションを考えろ」
「数日前に口うるさい祖母に言ってしまったよ。ごめん」
「実際に言っちゃったんだ! じゃあ、どっから外国人出てきた?」
「日本人らしい遠回しな皮肉は外国の方々にも通ずるかと気になって」
「日本人は社交辞令やお世辞が上手なイメージなんだが」
「さてここに翻訳箱があります」
「コントのような流れで正方形のスピーカーが現れた」
「繋がっているマイクに喋りかけると翻訳された日本語が返ってきます」
「ややこしいな」
「とにかく聞いてくれ。『老害の害は障害の害なんだよね。ところであなたの性格を、害を用いて表すなら害虫だよね』」
『日本では、老いぼれと妨げは共通した文字が使われています。その文字を用いてあなたの性格を表すなら毒虫となります』
「これ、混乱しない?」
「オブラートに包むのが日本人」
「敵意が隠しきれてない」
「何か言ってみて」
「それじゃあ…『八方美人が災いして八方塞がり』」
『見てくれを取り繕っても肝心なのは自分の意思』
「翻訳できていない」
「先回りして教訓をくれたね」
「じゃあこれは?『風見鶏』」
『周りの状態を見て、都合のいい方に意見を変える人。日和見主義』
「たしかに日本ではそういう意味もあるけれど」
「オモシロ機能がついているから設定してみよう。『くもながれればツキがでる』」
『苦しみも過ぎれば運が回ってくる』
「雲が流れたら月が見えたって文なんだけどな」
「雲流れれば月が出る。苦も流れればツキがでる」
「君の番だよ」
「『出不精』」
『手、浮上』
「こえーよ」
「文の区切り方で読み方が変わる、ぎなた読みと濁音や清音を足し引きして別の文章に変身する言葉遊びの合わせ技だね」
「でぶしょう。て、ふじょう。箱の作者は言葉遊びが好きなんだな」
「謎かけモードも聞いてみよう」
「全然興味がないから疲れてきた」
『人の集まらないサーカス団と掛けまして、この状況と解きます』
「翻訳からすっかり脱線したな」
「その心は?」
『どちらもしょう(ショー)もないでしょう』
「うまいのに気〝まずい〟とはこれいかに」
『〝み〟についているのに〝き〟に〝なって〟いないというが如し』
「もういいよ」
「最後が無理問答だから強引に閉めたね?」
『ご清聴ありがとうございまいました』