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「君が降る日」島本理生

あらすじ

恋人の隆一を事故で亡くした志保。その車を運転していた隆一の親友・五十嵐。
彼に冷たく接する志保だったが、同じ哀しみを抱える者同士、惹かれ合っていく「君が降る日」。結婚目前にふられた女性と年下の男との恋「冬の動物園」。恋人より友達になることの難しさと切なさを綴った「野ばら」。恋の始まりと別れの予感を描いた三編を収録した恋愛小説。

感想文

もともと高校生のころには読書沼にはまっていましたが、島本理生さんは、大学時代に「ナラタージュ」を読んで以来、今でも一番好きな作家さんです。

暴力的な感情、あるいは暴力そのものに追い詰められていく作品も多いのですが、
今回はそうした場面はなく、静かな距離と、埋まらない痛み。
そうした行先をなくている感情が、細雪のように繊細に描かれています。

理知的な的確さと、胸にこんこんとつもり、やがてとけていく思い。
島本さんの筆運びは、ときに残酷で、ときに・・・・・・

やさしい、のでしょうか。

優しいという言葉には、「つつましさ」や「素直さ」、「刺激が少ない」といった意味合いもあるようです。

そういう意味だけ抜き出してみれば、けして「優しい」あるいは「易しい」とはいえない物語です。

淡々と、切々と。

積り崩れそうな脆《もろ》い思いを、この塊《かたまり》を。
雪はやさしく、淡いままに包むのでしょうか。
それとも、重くしみ込んだ土のように、覆《おお》ってしまうのでしょうか。

とけていく水の流れの先を、見届けていたい作品です。

コメント

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