各位
あけましておめでとうございます。
旧年中は10月20日に拙作「山本五十子の決断」を無事出版することができ、ご好評を頂いた結果、次巻となる「山本五十子の決断2」の発売も決定いたしました。皆様の応援の賜物であり、心より御礼申し上げます。
そしてこのたび、「山本五十子の決断2」の発売時期が正式に発表されました。
2月20日火曜日、ファンタジア文庫から発売されます。
イラストは珈琲猫様、著者は私・如月真弘です。
詳しくはファンタジア文庫ホームページをご覧下さい。
http://www.fujimishobo.co.jp/sp/fantasiawebnovel/2巻は、いよいよミッドウェー海戦です。帝政葦原連合艦隊とヴィンランド太平洋艦隊が、総力を挙げて激突します。
1巻では、連合艦隊のうち大和はじめ主力戦艦群が史実通り瀬戸内海の柱島泊地に錨を下ろしている中で、洋平と五十子達が出会いました。
セイロン沖海戦は遠いインド洋で起きていて、そこから徐々に洋平が少女達の信頼を勝ち得ていき、軍令部との対立など海軍内の組織の壁にぶつかったり、ドーリットル空襲という挫折を経験したりしつつ、五十子、束、亀子、寿子と絆を深める物語を書かせて頂きました。
この構成は本作を単純なチート物にしたくないという私のこだわり、組織の壁などのリアリティ、それに改稿の中で担当編集者さんが重視なさった少女達が好感度を獲得する過程などの観点から今も正しかったと思っておりますが、一方で戦記物ということで葦原とヴィンランドの海戦を期待されて本を買われた方には肩透かしだったのではないかと、申し訳なくも思っております。
史実でも、開戦から半年柱島泊地を動かなかった大和以下の連合艦隊は、前線の将兵から「柱島艦隊」などと揶揄されていたのですが、同時にこの穏やかな泊地の日常が戦時の連合艦隊のリアルで、私はそこにこだわりました。
2巻は、こうした穏やかな日常とは打って変わって、冒頭から珊瑚海海戦の死闘を描き、そしてミッドウェー海戦へと続いていきます。
洋平が、そして五十子が、生死をかけて戦います。
執筆にあたり、ミッドウェー海戦の徹底的な検証に努めました。エンターテイメントとのバランスを取りつつ、史実では何故あのような結果になったのか、どうすれば克服できるのか。
そして、ミッドウェー海戦は戦争のターニングポイントではなかったという見方もありますが、一方で何故ターニングポイントと言われるのか。
同時に、1巻がそうであったように、本作は戦記ではありますが兵器より先に人間を描いたドラマであります。
私の執筆動機の一つとなった、愛すべき人達を運命の頸木から救いたいという思いをひたすらにぶつけました。
この2巻がどれくらい売れるかで、3巻以降が出せるかどうかが決まります。
2巻は「山本五十子の決断」にとってもターニングポイントです。
既に3巻、すなわちWEB版に無いその先の物語を準備中です。
この戦いを、最後まで書ききりたいです。
欲を言えば5巻まで頂きたい。
どうか皆さんの力をお貸しください。
今、遠くで響く除夜の鐘の音を聞きながら、これを書いています。
去年一年、プライベートでは本当に色々なことがありました。具体的にここで語るつもりはないですが、語りつくせないと思います。
春には幸せなことがありました。でも悲しいこと、辛いこともあって。吹き付ける強い風に、私はあまりに弱く。思い半ばで幸せはこぼれ落ちてしまいました。
作家としてはプロデビューし2巻も決まった私ですが、プライベートでは、苦境と混迷のただなかにあります。
考えているのは、今の私を、かつてそうだったようにいかに創作にぶつけるかということです。
今、書きたいテーマ、自分の中に叫びたい大きなカタマリがあるんですが、これを物語にどう組み込んでエンターテイメントに昇華させるかが見つかっていないんです。自分の中で消化できていない状態で、無理に積み上げようとしては、これじゃないと崩れる感じ。
思えば「山本五十子の決断」も、最初に五十六の女性化を思いついたけれど、それをどんな物語にするかに結び付くまでは何年か開きがありました。
WEB版読者の方はご存じだと思いますが、「山本五十子の決断」受賞以降の私のスランプは、そういう事情です。
一度に多くのことができない不器用な私です。
今はまず、「山本五十子の決断」の書籍を懸命に頑張りたいと思っています。
どうか「山本五十子の決断」を、今年もよろしくお願い申し上げます。
平成30年1月1日
如月真弘