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「――奇獣流転譚―― その音を知る者へ」の世界がさらによく分かる(かもしれない)豆知識 医療について

 作中ではやや近代以降に寄せた病気の描き方をしていますが、実際の中世は、病気に対するとらえ方も治療法も、現代とは大きな隔たりがありました。

 当時は病気の原因を「瘴気のせい」「前世の悪業のせい」「悪霊のせい」などととらえるのが主流でした。細菌やウイルスの存在など、知るよしもなかったので。

 では、感染症が人から人へうつることすら気づいていなかったかとなると、そうとも言い切れません。明確なメカニズムは分かっていなくても、おぼろげながら、病気がうつることを感じ取っていた形跡があります。古代に書かれた令義解に、ハンセン病と思われる病気が、人から人へうつるという記述が見られます。もっとも、その見方は主流とはなりませんでしたが。
 とはいえ、当時は病気自体が「穢(けがれ)」とされていたので、身内以外の人は病人を敬遠する傾向があったでしょうし、高貴な人のそばに病気の人を居させるようなことも、あまりやらなかっただろうと想像されます。

 治療法も、現代から見たら首を傾げるようなものも多々ありました。作品のイメージにも関わってくるので、ここでは省略しますが、動物や人の糞尿を用いた治療法すらありました。もちろん、調合した薬を用いた治療法も、医学書には数多く記されていますが。

 というような状況だったので、中世の医療を忠実に再現して書く、となるとさすがに物語の展開の面でも難しく、近代以降に寄せている部分もありますが、その点はどうかご了承ください。

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