「15:LIZの原罪」をアップしました。
この話は他に比べて非常に暗いです。
今まで書いた話のうち、一番お気に入りは他の近況ノートでも書いている通り、「戯曲『惑星の死と死』」なのですが、思い入れが強いのはこの話です。
というのも、そもそも「惑星#00」というのは、この「LIZの原罪」ありきで作った話なのです。
10年近く前に、当時所属していた文学サークルの部誌に書いたのが一番最初です。題名もそのまま同じです。
それを個人的に気に入っていたので、何年か経ってから一つのシリーズにしようと思い立ちました。
ただ残念なことに、当時パソコンの扱いもあまりわかっておらず、バックアップを取るという発想もなく、部誌もどこかに行ってしまったので、元の文章については手元に残っていないのです。
ただ、クルエ個人の性格や名前については、かなり変えていますが他はあまり変わっていません。
今回他の元教え子に比べて、ミルドの扱いが軽いですね。
まぁ聞き手役を据えるのに必要だっただけなので、当然の結果でもありますが。
さて、「原罪」について。
カラス(作中では記載していませんが、クルエという名前でした)は、自分が生き残ったことが他のクローンを生んだと思って、それを原罪だと言っています。
クローンに意思はありません。悲しいとか痛いとか、そういうものは存在しないのです。
だからアキホはカラスの言いたいことはわかっても、理解は出来なかったのだと思います。
でもカラスは自分をクローンだと認識し、そしてLIZシステムのクローンも同じものだと思った。だから意思のない彼らの代わりに悲しんでいるとも言えます。
罪に耐え切れなくなったカラスは死にました。
しかしアキホの罪はまだ残っています。カラスに不要な苦悩を背負わせてしまったという罪です。
その贖罪としてアキホは人間のクルエを作りました。
そしてクルエが普通に健全に幸せに一生を終えることを祈っています。
クルエにカラスの時代の記憶は残っていません。少し嗜好などは似ていますが、それが信号によるものなのかはわかりません。
この人間のクルエがカラスのクルエの生まれ変わりであれば良いという、アキホの願いです。
それは勿論彼女のエゴでしかないけど、アキホはカラスのように死ぬわけにはいかないし、そして償わないわけにもいかなかった。
結局、クルエが今生きていることが贖罪となるのかはわかりません。それを突き詰めれば、やはりアキホは罪を負うでしょう。確かめようがないけれど、切り離すことは出来ないので、記憶の中のカラスが鳴くのです。
残りあと1話です。