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【角川つばさ文庫応募作】のっとり魔 2023/08/07

2023/08/07
初のホラー作品です。

「のっとり魔」
https://kakuyomu.jp/works/16817330655002875079

第12回角川つばさ文庫小説賞の応募作となっています。
今年でつばさ文庫への応募は4回目となりますね。なんだかんだで完結作が積もっていくのは感慨深い。

意気込みをここで書いておきます。
なぜ書くかって、この情熱を言語化・明確化したいから。
そんなの書くのってかっこわりぃなと、今まで思っていましたが、後々の自分が見返したときに、

「なぜこんなの書いたんだ?」

って、わかるほうがいいんですね。
作品に魂が乗っているか、狙いどおりにできているか、いろいろ検証できるんです。

さて、本作品の「のっとり魔」。
タイトルが短くわかりやすく、「のっとり系のホラーかあー」って容易に想像できますね。
このタイトルを捻出するのに、めっちゃ苦労をしています。

そもそもなぜ、今回はホラーで挑んだか。
心の中の〈編集長〉が「ホラーを書け」と言ったからです。そうとしか表現しようがなく、何かピンときたのでしょう。
さらにこの〈編集長〉はホラーに条件を出しました。

1 直接的なグロは入れない
2 善人は救われ、悪人は堕ちる
3 不思議なアイテム系にしない

私はホラーを書いたことなく、避けていたジャンルでもありましたが、この条件にしっくりきたのでホラーに挑もうと思いました。

1については児童向けのレーベルなので、ホラーといえどもしょうがない。殺人にならないホラーというのを考える必要が出てきます。

2については勧善懲悪の面白みをホラーに落とすということです。ホラーって後味悪いものが多いですが、少女漫画のヒット作って胸がすくホラーも見られます。近年では「ショコラの魔法」「人間回収車」「地獄少女」にみられるような、悪人が地獄に堕ちるパターンでスカッとするのがいいんですね。
「銭天堂」はアニメだけ少し見ましたが、これも勧善懲悪っぽい。
児童文庫でこのパターンのホラーというは、狙い目では?ということです。
モデルに挙げられる作品もあり、読者像もハッキリとしていて、この課題で挑戦するのは非常に有意義に思いました。

3については既存作との差別化です。
つばさ文庫は「世にも奇妙な商品カタログ」があるので、アイテム系のホラー作は極力避けるべきでしょう。
児童向け市場は「銭天堂」が大人気で、アイテム系のホラーを書いたらパクりだと思われかねません。
なので、アイテムを使わないホラーを考える必要が出てきます。
そういえば、〈編集長〉はこんな条件も出しました。

4 連作短編
5 ゲストキャラの一人称

ここでホラーのシステムを考えて練らなきゃいけません。
アイテム系は4がやりやすいですが、不思議なアイテムを使わない場合はどうやって連作にするべきか。
そこで参考にする作品が「人間回収車」「地獄少女」。
「人間回収車」の場合、黒いトラックの運転手に、「この人を回収してください!」で連れていかれるんですが、この車は「不要になった人間」だけしか回収ができず、必要に思える人がいれば返品されて戻ってこれるという話です。家族や友人に大切にされたら回収されても戻ってくるし、逆にみんなに見放されるような悪人であれば地獄行き。
このシステムがよくできていて、いろんな主人公が書ける。
「地獄少女」についてもそう。処刑代行サイトにて、死んでほしい人の名前をフォームに入力するだけで地獄送りにできるという。だけど処刑を頼んだら「人を呪わば穴二つ」で、死後には苦しみが待つ覚悟。
このシステムもシンプルで、処刑したいきっかけや、主人公の善悪などでいろんな話が書けるわけです。

システムをいかにシンプルにして、バリエーションを出すかというのが、難しい。
だけどフォーマットさえできれば、跳ねる可能性があり、悶々と考えていきました。

そこで私は「他人になれるホラー」に注目したわけです。
「のっとり」です。死んだ幽霊が憑依ではなく、生きている霊が憑依する。
もし他人になれるなら、どんなことをしたいだろう?――これが本作品のホラーの根幹となりました。
のっとりする側、される側。それぞれにドラマが生まれると。
憎いあいつを殺したければ、カラダをのっとり、自傷する。悪人視点。
憎いあいつを止めたければ、カラダをのっとり演技する。あいつの自由を奪い取って大切な人を救い出す。善人視点。
これならいろんな話が書けるし、される側の視点も入れれば話の引き出しも多くなる。

採用です。決まりました。
あとはシステムを固めますが、これがなかなか難しい。
勧善懲悪の方法と、のっとりの方法です。
連作短編にするのなら、案内人が必要です。
案内人が呪術する? 誰かが呪術を依頼する? それでどうやって破滅する?

のっとりによるデメリット。他人のカラダで悪さをするなら、その処刑が必要です。
処刑人は案内人。そこで呪術をかけるんじゃなくて、解除する側を設定に。除霊師です。
ただし除霊にも条件があり、除霊師の意思では除霊しない。「呼ばれない」と除霊できない。呼ぶかどうかは人間たちに委ねることになりました。
また、除霊をすることにより、「霊障」を与えることにします。それで悪人は霊障によって、幻を見せられ、地獄行き。これで1もクリアです。物理的なグロさはない。「ショコラの魔法」でいうならば「闇に墜ちた」状態で、このエッセンスを借りました。

のっとりの方法については、「偶発的」になりました。つまり主人公たちは、のっとりの方法を知らないけれど、気がつけば誰かになっている。導入の説明が省けます。これは大きなメリットです。
このお話は、「のっとりした/されたあとにどうするか?」の行動の選択が重要であり、焦点は除霊と霊障です。
善人であれば霊障は軽微で立ち直ることができますが、悪人は悪夢を見続けます。

これでシステムができました。
この骨組みさえできてしまえば、いろんな話が書けそうです。

最後に5の一人称についてですが、身近さや共感を表現するには、一人称が効果的です。
しかも短編。誰にでも起こりうるホラー。
対象読者が小中学生の男女(女子多め)なので、主人公もどこにでもいそうな感じにします。トラブルや悩みを抱えさせます。

今までの私はこういったタイプの主人公をやらなかった。どちらかというと憧れというか、ヒーロータイプが多かった。
エンタメをやってトラブル解決でめでたしっていう話を書きたかったが、きっと作りこみが甘いのか、あるいは性に合ってないのか、あるいは求められてないのか、応募をしては落選です。

だから今回は一人称で、対象読者に寄り添ったスタイルです。なるべく共感できるように、等身大に書きました。

私はこの作品を通じて、読者にこう問いかけます。

「もしもあの人をのっとりしたら、あなたはどんなことしますか?」
https://kakuyomu.jp/works/16817330655002875079

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