初出が2007年なので、憲法改正前に書いたので、成人年齢が20歳という設定になっています。
今(2024年)でも18歳未満は飲酒や喫煙が禁じられているので、一応ギリギリ通じるかなぁというタイトルになっています。
タイトルが決めるのが大の苦手でストレートに付けてしまい、顰蹙を買うことしばしば。
競作として『春祭り』に三題噺の小説を提出することになり、悩みに悩んだ挙句、付けたタイトルでした。
タイトルだけを見た初見の方はミステリーや犯罪ものだと思ったようですが、ごく普通に青春ものでした。
今回も、そんな感じで勘違いをした方がいたら申し訳ありません。
執行猶予というタイトルは発達心理学でのモラトリアム(猶予期間)から決めました。
定義としては『肉体的には成人しているが、社会的義務や責任を課せられない猶予の期間。また、そこにとどまっている心理状態。(参考:デジタル大辞林)』ということです。
オリジナル小説サイト『紅の空』の後書きにも書いたように、タイトルの第一候補は『モラトリアム』、第二候補は『エスケープ』、第三候補は『逃避旅行』でした。
エピローグにあるように大人になった二人が出てくるので“向こう側”。「対岸」という意味で、つけてきました。
思春期を超えた先、ということです。
第一稿では視点人物のケースケにも、ケースケが見つめ続けた幼なじみの少女チルハにも漢字の名前があったのですが、あえてカタカナ表記にしました。
読みやすさを狙ったわけではなく、現代ものの手軽さを狙っての名づけになっています。
カタカナという際限まで削った表記であり、ローマ字のように音だけを拾っているような無味乾燥さがこの二人の関係性を現れているような気がしています。
男女の色恋に発展しているわけではないので、恋愛のキーワードは使いませんでした。
二人が大人になり、パートナーとしてお互いを選択をするのかどうかは、読者の皆様にゆだねたいと思います。
この作品は『思春期にいる最中の方』、『モラトリアム期間を脱せない方』向けに書いたものでした。
私自身が無事に成熟した大人になれたかどうかは別として、学生時代の自由さを息苦しさを味わっている方に寄り添いたいと思って執筆しました。