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父の死に思う

 私事で恐縮ですが、先日、90を超えた父が帰天しました。

 父は子供の頃私塾を開いて、どちらかというと出来ない子を丁寧に指導して勉強の楽しさを教える事を志していました。
 お蔭で我が家は貧乏でしたし、私も塾に通っていたお蔭でウルトラマン80もスカイライダーもリアルタイムで見る事が出来なかったので大層悔しかったものです。それでも80は1話とメカギラスとサラマンドラを根性で見て特撮の凄さに絶叫しました。それはさておき。

 子供から見て何でも知ってる父、色々な事を教えてくれる父は憧れでした。
 しかし、多くの子供を教えて尊敬されていた父でしたが、自分で何かを書いて残す事がなかったのが残念でした。
 痴呆となって話も出来なくなった父の頭にはどんな知識が詰まっていたのか。戦争の下家を焼かれ健康を害した無念は如何はかりだったか。
 貧乏な中将来を心配する事は無かったという、高度経済成長の人々と同じその楽天さ加減、それは何故だったのか。
 何か後世に伝えたい事は無かったのか、口にした以外に文章等に残したいものは無かったのか。
 饒舌だった父を思い出すと、そんな事を考えてしまいます。

 私達が気軽に色々な物語を書いて、読み合える環境があるという事はとても素晴らしいものです。
 もし父の時代にそんな環境があれば、私はもっと色々な事を知る事が出来たのではないか、父も語りたい何かを見せてくれたのではないか。
 そんな寂しさをどうしても感じてしまいます。
 私は、色々な方が思い思いの物語を書き綴り、色々な夢の世界に触れることが出来、様々な正義感、人生観、許せる事許せない事、それらに自由に触れあえるこの空間に参加できた事を、何故か今改めて幸福に感じます。

 じゃあテメェの娘に作品読ませろ?恥ずかしくてそんな事できませんがな。

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