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うちの子語り 燈真

 ふと、なんで燈真君って呪術師堕ちしないんだろう? って思った。

 本人は「力の使い方を履き違えない」という考えを持っているから、無闇な破壊が間違いだと思っている——という設定なんだけど、「じゃあ、正しい力の使い方って何」という疑問にぶつかりました。そして燈真君はなぜそれを知っているのか、と。

 おそらくは、家族や自身を襲った理不尽から「こんなことは間違っている」と思ったのかなと。そして、「じゃあその仕組みをぶっ壊そう」と悪に染まらなかったのは、他ならない稲尾家が寄り添ったからではないか、と。

 燈真君にとっての正義の指針は、椿姫ちゃんの生き様——強く生きることにあるんじゃないかと思っています。
 実際燈真君は「人間の醜さも妖怪の恐ろしさも、どっちも知ってる」というタイプなので、多分、悪堕ち前の嶺慈君みたいに「結局人間の美しさ、世界の尊さが好きなんだよな」という前向きな子だったら結構簡単に闇の走っていたと思います。
 評価軸が他人のため、ではなく、自分が信じるただ一つのため、なので、移ろい変わる周囲の情勢に引っ張られず、「自分という軸」で物事を判断して行動できるのが燈真君の強みであり、「正義」の価値観なのでは……と。

 傍目には燈真君もだいぶやべーやつですけどね。だって最強になる動機が「俺の理不尽をぶっ飛ばす、その歪みを正す」という、本質的には嶺慈君のテロリズム思想と同じなわけですし。ただそこに導いたのが「稲尾椿姫」か「闇咲円禍」かの違いだけであって……。

 ……え、そう思うと重要なのはヒロインだったってことか?
 狐か吸血鬼かでこんなに変わるのか……?

 どうなんだろう。でも、根幹の考え方が違うから、周囲の環境だけでその後の行動が変わるとは思えない……。
 結局、元人間の人外とはいえ、その精神性は十数年人間として過ごしてきたものなので、「自我」=「自分がそれまで培った価値観」だと思うし……。

 とはいえ、家庭環境も歩んできた人生も、生まれ持った素質も等価といえる二人が真逆の道に走ったのは、生みの親である私からしても、非常に不思議です。

4件のコメント

  •  やっぱり男の子って付き合ってる彼女の影響を受けちゃうものなんですかね……

     ちなみに拙作の源吾郎君は、何処をどう見ても闇堕ちしそうな気配が無いんですよね。そりゃあまぁ「人間として生きろ」みたいな親兄姉(特に長兄※)からの抑圧はありました。とはいえ親族たちはマトモ寄りの人物ですし、ぶっちゃけ身内からは可愛がられていましたからね。
     その上「おっしゃ最強になったる!」という野望の許就職した後も、敵味方共にヤベーやつと接するうちに「やっぱりイキってただけなんや」「大いなる力には大いなる責任が伴うんやな」と思うようになってますし……
     というか自分が培ってきた価値観という点で考えると、末っ子だった源吾郎君は、やはり「世間のルールとかに巧く適応して生きていく」スタイルが一番自然なのかも、と思われます。
     いやはや自分語り失礼しました。

    ※長兄の宗一郎さんは、普通の人間として結婚し、家庭を築くという青写真を持っていました。ところが人面狐+三尾というあからさまに異形姿の源吾郎君が誕生したのを見て、「異形の血からは逃れられんのか……」とショックを受けます。その後結婚をあきらめ、末弟を真人間として育てる事に拘泥した……みたいなバックボーンがあります。
     源吾郎君はその事を知った上で妖怪化しちゃったんですけどね。
  •  そうなんですかね……。

     確かに社会的な善悪の価値観がしっかりしてますよね。八頭怪の甘言に惑わされないあたりからも社会正義の有無や、仕える組織への忠実さが滲んでましたし。
     うちの子に共通するのはいずれも「社会の仕組みを縮図化した家庭が終わっていたこと、愛してくれる家族がいないこと」なんですよね。そのせいで変な女(言い方よ)に影響されたのかもしれません。まあ椿姫ちゃんのあの蓮っ葉な物言いも変な女の部類でしょうし。

     だいぶ重めのバックボーンですね……。
     そしてその上で妖怪として生きることを選んだ源吾郎君、順応性は高くてもやっぱ我は強いんやなって。
  •  とはいえ、源吾郎君って実は彼女が出来たからと言ってそこまで大きく変化してないんですよね。まぁ護身術とか近接戦には詳しくなっているでしょうけれど。
     むしろ闇堕ちの危険があったのは雪羽君の方かもしれません。とはいえ、保護者である三國さんが(不器用ながらも)雪羽君を愛していた事、比較的真面目な友達兼ライバルが傍にいた事により、闇堕ちを回避しましたが(第三部ネタバレ)

     源吾郎君、冒頭で「最強になってハーレム作るねん!」とかって言ってるんですが、これも実は反抗期が爆発しただけではないかと最近は思ってます。外伝でいくらか丸くなっているのは、自身の願望が叶った事に加え、思春期的なアレが収まったからなのかもしれません。

     宗一郎さんも当時18だったので、ショックを受けてしまったのはやむなしと言った所でしょう。それでも、末弟を疎まず実の親子に間違えられるほど(※)に面倒を見ていたので、まぁ良い人です。
     なお、我が強いのは源吾郎君だけじゃあなくて兄姉たちも同様です。オカルト大先輩は言うに及ばず、宗一郎さんがあからさまに異形な源吾郎君を人間として育てると決意したのも、我が強くないとやってられないだろうなと思われますし。

    ※ちなみに宗一郎さんは、源吾郎君を息子だと思われる事について嫌がってません。むしろ満更でもない様子で「実は弟なんですよ~」と言ってそうです。
  •  燈真君はできる前から(初対面が少年時代)影響を受けていましたね。強く生きなさい、と言われたことが理由で強くなることに固執し、それが変な方向に炸裂した結果が不良漫画の主人公みたいな生き様になってます。どうして変な方向ばかり思い切りがいいの! って椿姫ちゃんは思ってそうです。
     闇落ち嶺慈君は、周りの歪さに気づき始めた少年時代の味方であった実弟が先に堕ちていたことが、最大の闇落ちポイントかもしれません。嶺慈君自身、今でこそ自分の美貌を武器にしてますが、家で地獄を味わってた頃は自分に毒牙が剥きそうになったこともあったという設定なので、まあまあ過酷です。

     燈真君のわかりやすい厨二病ポイントって源吾郎君と同じで「最強になること」を純粋に信じてるところなんですよね。
     世界観の違いもあって燈真君はそれを実現してしまう(ネタバレ)わけですが、実は終始個人のためではなく、途中で「俺はきっと、人生をかけられるだけの仲間が欲しかったんだ」と自覚し、誰かのために戦うことを決断します。その誰かというのが椿姫ちゃんや光希君でもあるわけですね。

     高校生〜大学生の時分に、人間的な生を望んでいたところへ異形の弟の姿を見たら……そりゃあ。それこそ妖怪好きって謳ってる人も(その世界観の)言葉を飲んで絶句しそうですよね。「ああ、妖怪ってのは、異形なんだ」と実感してしまいそうです。
     確かにオカルトライターなんて危険な仕事や芸術家、宗一郎さんの生き様といい自分を見定めてないと無理ですよね。苅藻さんもそんな感じですよね。やっぱ術者なんてやってる以上、自分なりの規範がなきゃどっかで道踏み外しそうですし。

     宗一郎さんなんだかんだ幸せそうでよかった……。
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