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  • 現代ファンタジー

★【レガシオン】外伝01話「赤城駿」


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※この物語はレガシオン・センスの前日譚になります。舞台は主人公が"翔真"になる前の日本。本編2章を読了した上で読み進める事をお勧め致します。

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 ――SIDE:赤城駿――


 SNS掲示板で可笑しなプレイヤーが居るっていう噂を聞いた事がある。言っても、世界規模のVRMMO『レガシオン・センス』だ。そんなプレイヤーは掃いて捨てる程居るだろう。

 俺が言いたいのは、輪を掛けて有り得ねぇってプレイヤーの話だ。ボイチャOFF、メッセージブロック。アピールガン無視の"道化師"アバター。ログイン継続は脅威の12,000時間。廃人BOTだとか、住民Sだとか、重度のマキシ厨患者だとか、付いた呼び名は様々だ。

 中でも浸透しているのが"レガシオンの亡霊"とかいう名前だろう。実際、俺も遭遇した事はあるが、ありゃあ気味が悪ぃぜ? 人工AIが動かしてるって言われるのも納得だ。

 プレイヤーネーム・ソーマ。

 世界ランキング第3位の男は、この世界に確かに存在している。PTを組む前提のバランスで調整されたレガシオンで、たった一人|単独編成《ソロ》でランキング上位へと駆け上った男……。

 プロゲーマー集団の俺達『|黄泉比良坂《よもつひらさか》』と同等……もしくは、それ以上の話題性を持つ異端のプレイヤーだ。全く以って気に入らねぇー。

 折角の集合オフだってのに、結局今日も話題となったのはアイツの事だった――


「えー、お集まりの皆さん。今日も遠路遥々御足労頂き、誠に有難うございます」

「うーわ!? 学校かよ!?」

「堅苦しいのは止めよーよ、リーダー!!」


 貸し切ったスタジオの中、色取り取りの食事に囲まれながら、俺達は壇上で挨拶をする今夜の主役へとブーイングを行った。

 ありゃ確信犯だな?

 悪戯に舌を出しながら、直斗の奴は隣に立つマイスイートハニーへとマイクを譲った。

 焦って、困り果てる|呉羽《くれは》。

 そんな所もカワユイんだよな〜〜♪


「えっと、その……私達、黄泉比良坂は、今まで公式大会で優勝を取る事が出来ませんでした。3周年記念のこの大会で結果を残せたのは、多分、皆のおかげで――だからその、ええっと……」


 マイクを握り、アタフタとする呉羽。
 そろそろかな……?

 思った俺は、周りの連中に目配せをする。

 せーー、のっ!!


『――直斗、呉羽!! 世界ランキング1、2位獲得おめでとう!!』


 パーン! と、隠し持ってたクラッカーを鳴らし、俺達は二人の事を盛大に祝ってやる。


「――キャッ! え!? えぇ!?」

「全く、負けたぜお前らには!」

「流石"|黄泉《よもつ》"のツートップだな!? いつかは獲るんじゃねーかなとは思ってたけど、まさかワンツーフィニッシュとはなぁ!?」

「凄いです、呉羽さん!」

「|花糸《けいと》……|駿《しゅん》……!!」

「祝勝会!! 盛り上がって行こうぜー!!」


 ローストチキンを片手に、叫ぶ俺。

 此れを皮切りにして、黄泉の仲間達は思い思いに皿の食事を突いて行く。


「|御剣《みつるぎ》! ケーキ!! ケーキあげる!!」

「……ありがとう、ペトラ」


 お、色男がロリっ子と戯れてらぁ。
 少し揶揄ってやろうかな?


「よー、リーダー! 場所用意してくれてサンクスな! おかげで"負けた"俺達も楽しめてるぜー?」

「もー、赤城。またそれ言う!? 良い加減、直斗君に絡むのは止めなさいよ!!」

「うっせぇなぁ……男のプライドなんだよ! 屋代のババアは引っ込んでろ!!」

「誰がババアだ、このクソ餓鬼ィッ! 私はまだ32だっての!? ピッチピチのギャルよギャル!」

「……32歳って、ギャルなの?」

「止しなさい、|鼎《かなえ》君。口は災いの元よ?」


 中坊の|鼎《かなえ》が、モデルの刹那に嗜められてやがる。そんな事言われても、俺はまだ18だから32の女はババアとしか思えねぇ。戦友に気を使うのも違うだろう? 俺は正直に生きてんだ。


「ほらほら。そんな事言ってると、また呉羽ちゃんに愛想尽かされちゃうぜ〜?」

「んだと俊樹!? またって何だ、またって!?」

「喧嘩しちゃ、駄目です……!」

「赤城君、倖田さんは年上なんだから言葉使いを悪くしちゃ駄目だよ?」

「うぐっ、く、呉羽が言うなら……」

「やーい、怒られてやんのー!」

「!!」


 そっからは何時もの流れだ。俺を揶揄う倖田俊樹との追い掛けっ子。コイツは30才の大人の癖に子供相手にも容赦しねぇ、嫌な奴だ。

 皆が笑い、はしゃぎ、飯を食い終わった時だ。

 引っ込み思案の|野原花糸《のはらけいと》が、改めて今回の大会を振り返る。


「本当に優勝出来たんだ……」

「改まって、どうしたの?」

「何だか、実感が無くて――」


 呟く花糸に、俺は仕方がねぇなぁと、スマホの画面を見せてやる。

 表示したのは、今大会の順位表だ。


「見ろよ、個人成績1位から10位まで、全部俺達で埋まってやがる! 実感があろうと無かろうと、結果が全て! 俺達、黄泉比良坂は最強なんだよ!!」

「……ドベのお前が粋がるかね?」

「るせぇ!? いつかお前も抜かしてやる!!」

「それに――1位から10位までではないよ」

「――う」

「第3位が空いている。確か、プレイヤーネームはソーマだっけ?」

「レガシオンの亡霊……ね? 大会中に近くで見る事が出来たけど、あの子の"マキシマイザー"、半端じゃなかったよ?」

「あのクズスキルで、良くもあんだけ貢献度を稼げたよなぁ……? |単独編成《ソロ》で俺達と競って、団体6位ってのが信じられんね」

「へ……へへへっ! でもよ、今回でその亡霊も俺達が倒したんだっ!! 今頃掲示板では大騒ぎになってるだろうぜ!?」

「……」

「あ、あれ? 呉羽……?」

「また、彼の事を気にしてるの?」

「うん……ちょっとね……」


 言って、物憂げな表情を浮かべる呉羽。今大会はレガシオンの3周年フェスと同時に行われた。ランカーであり、プロゲーマーである俺達はレガシオン・センスのプレイヤー代表として会場に登板したんだ。黄泉比良坂は人気だからな。皆にはそれぞれファンが付いていた。――と、当然俺にもファンは居るからな!? 馬鹿にすんなよ!?

 ……兎に角、ランカー達が一挙に合わさる会場で、遂にあの男が現れたんだ。

 確か、|石動蒼魔《いするぎそうま》だっけか――?

 ほぼほぼイベントを欠席して、居るのか居ないのか今一分かんねぇ男だったけど、黄泉の中でもアイツに遭遇したメンバーが出てきたんだ。

 ソレが――|鶺鴒呉羽《せきれいくれは》と、ペトラ=ノーム。


「確か、意味分かんねぇストーカーに襲われたんだっけか? チッ、俺がその場にいりゃあなぁ!?」


 意気込む俺だが、呉羽には響かなかっのか、言葉はそのままスルーされちまう。


「あの人、私を庇ってくれた……庇って、腕を怪我したまま大会に挑んだの。だから、今回の記録は私の純粋な力量に寄るものじゃない……!」

「呉羽……」

「何でだろう……自分でも不思議なんだけど、私、あの人の事を考えると胸が苦しいの。締め付けられる様に痛んで、でも、それが……少し心地良い」

「呉羽――! それって、"こ"――」

「待ったァァァッ!!」

「――はぁ?」


 危ねぇ危ねぇ……屋代のババアがふざけた事を口走りそうになったから、俺が慌てて止めてやる。


「なぁ、呉羽――それは、風邪だ!!」

「え?」

「お前は当日ショッキングな事があって、身体が参っちまってるんだよ! さぁ、早めのパブロフだ! 母ちゃんが持たせてくれた風邪薬をお前にやるよ。これ飲んで元気になれっ!!」

「う、うん……ありがとう、駿……」


 ――キャァァァァッ!! 可愛いッッ!!

 やっぱ呉羽は最高だわ。
 お淑やかだし、可愛いし(二度目)

 他の女共にも呉羽の爪の垢を飲ませてやりたいくらいだぜ? それくらい!圧倒的にキャワ!(三度目)


「――で? それでその、ソーマ君っての。どんな顔をしてたの?」

「えっ、えっ、えぇぇ……!?」

「すごい、格好良かったよ?」

「本当、ペトラ!? ――ね。直斗君とソーマ君、どっちの方がイケメンだった!?」

「んー……ソーマっ!」

「うっはぁっ!! それ本物じゃん!?」

「言われてるぞ、直斗ー?」

「あはは。僕は別に何だって良いんだけどね?」

「ただ――怖がってた」

『え?』


 ペトラの言葉に、皆が驚く。


「……まぁ、知らねぇストーカーに腕を刺されたんだろう? そりゃビビるんじゃねぇの……?」

「逆に、良く大会に出て来たと感心するねー? 俺だったら、泣いてチビって棄権してるかも……?」


 |嘯《うそぶ》く俊樹に「汚いっ!!」と、直球の感想を口にする屋代。「悪い悪い」と笑っているけれど、コイツは絶対に反省してねぇな?


「――違うと、思う」


 騒がしい周囲の中、呉羽が呟く。
 その声には、ある種の確信を秘めていた。


「あの人は多分、他人が怖いんだと思う……だから、大会に来るのも酷く怯えてた……」

「そ、そりゃまた……」


 重度のコミュ症って奴か? まぁ、知っちまえば何となく想像は付くけれど――


「それなのに、彼は私を助けてくれた――」

「……きっと、それが彼の人間性なんだと思うよ」

「直斗……」

「例え自分が傷付こうとも、自身の信じる物に対しては常に真摯で有り続ける。ゲームを通じてだけど、彼の|為人《ひととなり》は僕にも伝わって来ていた。彼はきっと、何処までも純粋で綺麗な人間なんだよ」

「綺麗……か……」


 寂しそうな表情を浮かべる呉羽。

 くー! 何だか無性に苛々するぜっ!?


「くっっそぉぉッ!! マキシ厨、倒してぇぇ!!」

「お前じゃ無理だよ」


 俊樹の奴が茶々を入れやがる!!
 っせぇ! やって見ねぇと分からねぇだろが!?


「イーフリート装備で、ソーマと戦うの? 難しいと思うけれど……」

「やるんだ! 俺はやるんだよ! |鼎《かなえ》ぇ……中坊の癖に歳上に逆らってんじゃねぇぞ……?」

「ぼ、僕の方がランキングは上だしっ!」

「なにを〜〜!?」

「ひ、ひぃ!? 助けて刹那さん!?」


 悪戯をする俺を、軽く叱る刹那。

 いつも通りだ。
 いつも通りの光景。

 何でもないこの日々が、俺にとっての掛け替えの無いものになるなんて――この時は思っちゃいなかった。

 なぁ、|石動《いするぎ》――

 聞いてるかよ、お前――

 ボコスカ、ボコスカ叩きがって……

 マキシ使わなくても分かるんだぜ?

 何せお前は、恋敵だからな?

 謝ってんじゃねぇよ。ぶぁ〜か。


 ――任せたから……な?

1件のコメント

  • どこか既視感が感じられる人たちがいっぱいだ(^o^)そしてソーマ=翔真くん…前世から優しい人だったんかい( ;∀;)
    いつも誰かの為に傷付いてそれでも逃げ出さないその魂がカッコ良すぎんぜ(`ω´)
    ぼっちソロでも最強だったことを誇りに思います(。-ω-)トラブルに愛されてるのも前世からなんだなって( ノД`)…
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