📕「🍚🥢飯屋のせがれ、🧙♂️魔術師になる。――知力ひとつで成り上がってやる。」
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📖第483話 それにしても思い切ったことを。
https://kakuyomu.jp/works/16816927863114551346/episodes/16817330669137101074 その瞬間、ジェニーは自分が守る台車を横に向け、思い切り足で蹴りつけた。台車はガラガラと競技場のエンドラインに沿って走って行く。
一方、ジェニーは台車には目もくれず、フロントラインを目掛けて疾走した。
アキが慌てて放った矢は、横行している標的から大きく外れてしまった。
「そうか! 前に出て20メートルの距離からダメージを稼ぐつもりか!」
トーマが叫んだ。
30メートルの距離から放った矢と、20メートルの距離から放った矢とでは当たった際の威力がまるで異なる。距離が遠くなればなるほど、空気抵抗を受けて矢の勢いがなくなるのだ。
「台車の側を離れてはいけないという規則はないからな。それにしても思い切ったことを」
スールーはジェニーの思い切りに感心した。
ジェニーはもう台車に戻ることはできない。1分という制限時間がそれを許さない。試合終了まで彼女の標的は無防備に揺れていることになる。
フロントラインにたどりついたジェニーは、素早く矢をつがえ、標的に放った。
息も乱さず、機械のように正確に、3秒に1射のペースで矢を放つ。
「|あの距離《20メートル》では、誤差も何も関係ない。振り子の頂点を狙わなくても当てられるわけだ」
ジェニーがフロントラインで射撃を始めたのは試合開始後45秒。残り時間を考えると5本の矢を当てられる。
「当てた矢の数ではアキの勝ちだが、与えたダメージの総量ではジェニーが逆転するぞ」
素早く計算したスールーが声を上げる。
……