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https://kakuyomu.jp/works/16816927863114551346📕第181話 「始原の赤」に染まりながら、ステファノは「その人」を描く。
📕一部抜粋:
肩越しにステファノが描くデッサン画を覗き込んだ時、びしりと自分の体が立てる音をヴィオネッタは聞いた。その衝撃は言葉にできない。
芸術ではない。ステファノの絵は美術ではなかった。
(何だ、この絵は?)
スケッチとはモデルを元にして描くものである。この場合のモデルは石膏像だ。
石膏像の姿をいかに再現しているか、そこに「美」の概念が込められているか。それが鑑賞のポイントであるはずであった。
ステファノの絵は違った。
(いや、これは「絵」なのか?)
ヴィオネッタの目には「人物」が見えた。何事かに当惑する「命ある人」がいた。
絵が動き出すわけでも語り掛けてくるわけでもない。
だが、動かなくても「人」を人形と見間違える者があろうか?
平面に描かれようと、動かぬ図形であろうと、炭の単色であろうと。
そこに「いる」のはまぎれもなく「人」であった。
ヴィオネッタの脳がそう判断していた。
……
📕お楽しみください。🙇