豊右府末裔顛末記ですが、一ヶ月ばかり更新していなかった時期があり、その間にある程度書き溜めていたこともあるのですが、日に数度の怒涛の更新をしています。第一部の完結まではこのペースが続くと思います。第二部以降はゆっくりになると思いますが。
この物語には、吉興、時康、斉康という三人の主人公がいます。吉興と時康はすでに登場していますが。
題名からも分かる通り、本来は第三部のみを書くつもりだったのです。第三部にいたる事情を説明するために軽く書いた部分が膨れ上がってしまって、第一部第二部になってしまいました。
そう言う意味では本来の主人公は、第三部の主人公の斉康であって、時康はともかく、吉興は相当適当に作った人で、名前からして、最初は秀興であって、秀吉の秀に、最初と言う意味の興を組み合わせただけでした。
鎌倉北条氏の末裔と言う設定も、思いついたから使っただけのことであって、あんまり必然はありません。ただ、後からすればわりあい使いやすい設定ではあったと思います。
大半の人が下半身のことのみで生きている中で、天下という抽象を生きるには、やはり天下人の家系であったということが、分かりやすさになりますから。
ええ、自分で言うのも何なんですが、後から見て「なんや、これ、奇跡の設定やん!」ということが、この作品では不思議と多々ありました。
全部、あらかじめ考えていたわけではないんですよ。それが話が動くといい感じにピースがはまっていった感じで。
松平信康の血筋、見星院とコウ姫を出したのも、最初は、京都はこんなに混乱していました、ってのを描くため、たったそれだけだったんですね。織田信雄は彼女たちのことを失念していて、家康も手が回らない中、吉興はちゃんと京都奉行としてそういうところまで目配せしていました、吉興って有能!ってのを書くためだけに出した母子です。
それが、吉興を結婚させようかという時に、ちょうどあの人たちがいたなあということで、設定を再利用したわけですが、松平信康家との「融合」は作品全体を貫くギミックになりました。
それを通して家康の深い、人間的な心情も描けましたしね。ただの悪役にせずに済みました。
この作品は「不幸の作品」などとも言われていますが(笑)、私にとっても、作品自体にとってもとても幸運に恵まれた作品だと思っています。