日南田　ウヲ

　大阪には「なみはや」という潮言葉がある。それは時代の依り代人達が、音を拾い、それぞれの時代に当てて『大阪』を呼んだ言葉の名残であり――それは現代において『浪速、浪華、浪花、難波…

――サピエンス科学（Sapiens Science）とは何か。 これは「Art」を探るエッセイです。

　『奇なる姓に妙なる名』その人は『四天王寺ロダン』。 　彼はのっぽ背にちじれ毛のアフロヘアを掻きまわしながら、小さな劇団の一員として、日々懸命に舞台芸を磨いている。しかし、そんな…

■３１回電撃大賞一次通過作品 　四天王寺ロダンはファミレスで演劇の脚本を書いていたが、脚本のネタ切れに困り、窓の外をぼんやりと眺めていた。 　彼の視線の先に映るのは下校す…

　一艘の舟に乗り込んだ登勢。 　 　時は明治に変わり、人の情も変わりつつある。 　揺らめく舟は変わりゆく時代への客人を乗せ、灘の波間を行く。 　これはそんな一時代の一瞬を切りと…

　猛暑が続く週末、大阪にある場末の立ち立ち呑み屋で僕は友人からある事を耳元で囁かれた。それは――「空海の首を…探してくれませんか」と。 　冗談だと思った僕は彼に曖昧な返事をするが…

　曽根崎警察に一人の男が訪れた。 　男は或る絵を盗まれたと言った。それはゴッホの向日葵の絵だと男は言う。しかし、その絵は存在しない絵だった。 　そう、通称「芦屋の向日葵」、ゴッホ…

　これは『田中』さんを主人公に書き綴った短篇ミステリー集です。（＊それぞれの作品は既に発表済みです）　　 　様々な『田中』さんが事件に巻き込まれ、それは時に犯罪者に、また事件の傍…

　『奇なる姓に妙なる名』その人は『四天王寺ロダン』。 　彼はのっぽ背にちじれ毛のアフロヘアを掻きまわしながら、小さな劇団の一員として、日々懸命に舞台芸を磨いている。しかし、そんな…

　熊本と大分の境にあるN。ここには昔から通称『鬼提灯祭』という提灯祭りがある。その祭りは戦国の頃、大友氏の領内の府内から逃げた南蛮人が里奥の山に隠れ住み「鬼」化した為、彼等を殺戮…

　少年の名はガロ。 　彼は幼くして貧しい少年でした。 　だから幼くとも彼は働きに行かねばなりません。しかしながら大人でない彼ができるのは水車小屋の麦の粉ひき。 　そこで彼はやがて…

　この児童文学集は日南田ウヲ原作の色んな短編を纏めたものです。不思議な児童向け文学、創作民話または童話を集めたものです。sporyfyでも朗読をしてます。宜しく願いします。 　―…

　田中美恵子は大阪本町の小さな商社に勤めている。彼女の仕事は生活雑貨関連の貿易をしている企業の営業アシスタント。生活雑貨は多種、多品目を扱う神経の細かな部分が仕事上多い。故に、仕…

　出戸巡査は担当するこの事件が嫌だった。それはどんな事件かというと女子大生の下着が盗まれた事件――つまり下着泥棒という猥褻犯の事件だった。 　しかし彼は警察官。それが理由で事件が…

　唐津へと抜ける峠道がある。そして特にその峠道を散策したハイカー達が口を揃えて一番良いと言うのが夏から秋にかけて満開に咲く百日紅の巨木。そんな峠道の百日紅の巨木を抜け少し奥まった…

日南田ウヲの詩集です。是非お立ち寄りください。

　「古き世界」が終わった「新世界」。地球は『ガレリア』と呼ばれ、最終戦争から生き残った人類が科学を引き継ぎ散らばって生きていた。ホテル「風見鶏」はそんな新世界における最大のホテル…

　海幸彦、ヒムカの隼人達は若き王の事を日の御子ホデリと呼んだ。そして彼はまた一人の阿曇王族に連なる若者をこう呼んだ。 ――山幸彦、日向の御子ホオリと。 　彼等は蜀の国に伝わる桃園…

　故郷彦島へ帰った僕はある彫像の事でトラブルに巻き込まれる。それは二十年前に起きた或る事件。そしてその事件を友人に相談するうちに、事件の核心に触れ、そしてやがて事件は解決する。 …

　これは日向国（ひむかのくに）に伝わる「弥五郎どん」を題材にした創作民話です。 　 　現在も九州南部には「大男」伝説があり、その中の一つがこの「弥五郎どん」と謂れています。これは…

　大阪難波にある新聞社Mの本社ビル一階のカフェで佐竹亮はひとりの老人と向き合って話をしていた。老人の名前は――猪子部銀造。 　老人が来社したのは佐竹が勤めるM社が全国紙で募集した…

　山岳王国アイマールから海上都市シルファへ行くには、ルーン峡谷の谷間の荒れ道を行かなければならない。 　小国アイマールは山岳を切り開いた農耕王国。年に一度夏至の日に海洋都市国家シ…

　社会人一年生として働きだした僕（こだま）。そんな彼に魔術師組合（ギルド）本部からある指令がスマホアプリ『魔術師の目（マジシャンズ・アイ）』に届く。指令は「南米某国で鉱石を取り出…

　竜が棲む迷宮（ラビリンス）――そこには秘宝中の秘宝、『竜の涙（ドランゴンティア）』がある。もしそれを手にすれば、誰もが羨むような地位と名誉を手にできる。 　竜は眠につく、それは…

　大阪天満界隈の八軒屋。そこで男二人が話をしている。 ――「『漫画家』と『小説家』どちらがこれからクリエイティブで生き残れると思う？」 　そんな会話の先に、誰も悲劇が隠されている…

――この『鍵』はあなたのもですね？ 　田中と言う探偵から問いかけられた私は差し出された『鍵』を見るが全く見当がつかない。そんな私を見るにつけて田中の口調が厳しくなってゆく。 ――…

　妹の病室を訪れた僕は、不意に「小説を書かないか？」と言われる。それは妹が知らない少年の頃の僕と仲間が引き起こした夏の失踪事件についてだった。 その失踪事件は、懐かしい故郷の九…

人形町の裏手にあるその坂は「生首坂」と謂われている。 　その謂れは戦時中の昭和の初め、学徒出陣できなかったひとりの学生が仲間たちの戦死に懊悩して祠を覆う楠の枝で縊死したこ…

　田中リサはいつも夏になると腕に傷ができるが不思議だった。それを気付いた一人のアフロの青年とのやり取りの果てに、事件が起き、突然終わりを告げた。 　アフロの青年とは一体誰なのか？…

　田中翔太はガソリンスタンドでバイトをしている。部活に夢中にならない翔太はバイトでお金を稼ぐのが好きだ。 　そんな翔太がバイトするスタンドに一台の白塗りのセダンがやって来た。その…

　田中良二は大阪空町堀付近のくぐり戸の馬門がある二階建ての格子窓がある古風めかしい長屋に住んでいる。彼の趣味は新居でウイスキーを飲みながら買い漁った古書を独り読むことである。 　…

　銀河はその星が生まれるまでは暗闇でした。 　しかしその星が生まれるとその星の輝きで銀河は眩く輝き、その輝きがあまりにも銀河の新しい朝を告げるような輝きだったから銀河の星々はその…

　介護休業後、主人公の田中は会社の部署変えの結果、Ⅿ市の本社へ自転車通勤をすることになった。通勤とは不思議なもので、ある人物とは「あの時間、あの場所」でいつしか顔なじみになる。 …

　週末の幼稚園のお遊戯会で一人の園児が絞殺された。少年の名前は夏目優。まだ幼い死体は手に小さな折り紙とヒーロー人形が握られていた。 　沢山の人が来た週末の幼稚園で起きた惨劇。それ…

　美しい地中海の島、サンドリ―二。僕とジョゼはとても美しい、それは友情とも愛とも、いや恋とも言えないそれはとても甘美な時間を共有していた。しかし突然ジョゼは、街から忽然と消えた。…

　リリーは１枚の置かれた手紙を見つけると、自分のために夢を見せてくれたオチャメなある人物を思い出しました。 　それは少しおっちょこちょいの優しいあの人。 　この物語はそんなリリ…

イタリアミラノでの演奏会を終えたバイオリニストの律子は、休暇を故郷で過ごそうと決めていた。それは演奏会での曲を作る自分から感じていた喪失感を見つめ直そうと思ったからだ。 …

　少年はいつも太陽の沈む先の事を思うと心が輝いて煌めきました。そんな少年の前に風船を集めているおじいさんが現れました。おじいさんは少年に言います。「君ならきっといけるよ。君の願う…

これから皆さんにお話をする物語は遥かな昔、まだ私達の先祖が動物と言葉を交わして生きていた頃に人から人へと口で伝えられたある樵の物語です。

　カミュは生まれつき声が出ませんでした。しかしある夜、夜空を見て泣いていると大きな星が自分に口の中に落ちてきて、美しい声を手に入れました。美しい声を手にいれたカミュは、誰にも分け…

　少年は、屋根の上でいつも赤い色の空を眺め、いつかお父さんから聞いた美しい青く輝く海に囲まれた豊かな森や川のある青い楽園に行くことを思っていました。 　その場所は飛行艇乗りたちの…

　田中と津久毛は職業安定所の帰り、近所で起きた「女子高生殺害事件」について話を始めた。そのとき田中が津久毛に言った。 　「何故、夜、人は歩くのだろう」それについて自論を展開する津…

＠第2回ステキ文芸漫画大賞一次通過作品 　砂の中から黒い手が取り出したのはシマノエレクトロ二クス社の開発した農業用ロボット《ロボ男》 いままで砂漠の砂の中で眠っていたロボ男は、…

ＢＡＲ「蠍」に呼び出された田中は、佐古部のあまりに人を食った態度を見て腹が立ち席を立とうとした。その時佐古部から思わぬ人物の名前が出て、田中は驚く。 その人物は田中の部下で、…

　天満の画材屋で見つけた青い点描で描かれた向日葵の絵。それを手にした瀬戸群の元に美しい娘が訪れる。娘の名は小川静子。静子は亡くなった兄の向日葵の絵を取り返す為に、群とある約束を取…

　週末の休日を大阪Ｎ区の図書館で過ごしていた田中は、偶然にも会社の後輩である四十川仗助に出会う。 　彼はその図書館で何か用事があり、偶然、田中と出会ったのだが、その用事とは先週末…

　中之島公会堂と川を挟んだ向かいの場所画廊を構える鴨井陸は自分の画廊主催の公募展に寄せられた一枚の絵に思わずうなる。それはフランスで活躍した画家ユトリロの風景画「白の時代」ととて…

　芹澤馨は切り裂く様な絵を見て、その奥に潜むその人物の何かを感じ取った。 　それはまるで野獣のような強さであり、再生を願う、野生でもあった。それはまた芸術のある一面を見たものであ…

ある峠道に鎮座する若いお地蔵様のお話です。

夏休みを迎えた僕（こだま）は夏休みを無駄に過ごしたくない為、 目標を決めた。一つはバイクの免許を取る事。そしてもう一つはラテン語の古い辞書を翻訳すること。 　そんな夏の或る日、こ…