水瀬

床に放り出された擦り傷だらけのテレキャスター。そのボディから伸びるシールドはのたうちながら部屋中を這い回り、エフェクターボードにたどり着く前に同じく床に捨て置かれたジャガーに踏み…

その間、僕は毎朝八時に起き、冷蔵庫にある適当な食べ物を食べ、隣室で眠りこけているミコちゃんを叩き起こし、二人でゲームをし、また何か食べられそうなものを食べ、昼寝して、遊んで、酒を…

三門ハナについて僕が知っていることは、きっと少ない。時折起きるトラブルと他愛ない世間話。僕たちの間にあるものはそれが全てで、けれど、僕たちはそういう臆病な関係をひどく気に入ってい…

五点ビハインドという絶望的な状況で迎えた九回裏、ツーアウト、ツーストライク、ツーボール。ランナーは一、二塁。打席に立つバッターは打順三番、その名前は星野冬太。即ち、僕だ。

　何か大切な、取り返しのつかないものが終わってしまったのだということだけははっきりしていた。 　その大切な何かがなくなってしまった後にも、まるで行き先の見えない人生は続く。 　私…

「あんたこれからは卵生なの？」という質問からの大喧嘩の後「たまごフィッシュ」「子宮モンキー」という罵り合いを経て、私たちはお互いのことを「たまこ」「CQ」と呼び合うようになった。