宝石の春、歌う鯨

作者 水瀬

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★★★ Excellent!!!

 かつての天才美少女ギタリストと、その才能に心底惚れ込んだバンドメンバーの、夢の後の日常とそして再起のお話。
 モラトリアムを描いた現代ドラマです。自分の進むべき道を見つけられないまま、それでももがくように生きる人たちの物語。といっても、それは本筋やテーマに近い部分の話で、読み口そのものは決して重苦しくなく、むしろ登場人物の朗らかさや破天荒さのおかげか、どちらかといえば軽妙な印象で楽しく読めました。少なくとも、ただ悩んだり迷ったりするばかりのお話ではないというか、いやほらこういう題材だとどうしても鬱々とした内容を想像されてしまうような気がするので、そうではないですよ、的な意味で。
 主人公と言っていいのか、少なくとも視点を担う存在ではあるところの彼、倫太郎さんが好きです。より具体的に言うなら、物語の中心にいる天才・雛目あくりの姿が、彼の目を通してのみ語られるところが。きっと多分に主観が入り混じっていて、あてにならない、とまでは言わないものの、でも彼の心酔っぷりがはっきり読み取れてしまう。彼は本当に彼女のことが大好きで、そして好意以上にその才能に対して全幅の信頼を置いているというか、半ば神様を見るような感覚に近い。そしてそれがはっきり伝わってくるからこそ、中盤以降の展開にものすごくドキドキする。
 素手で心臓を握り潰されるかのような、将来に対する嫌な予感。この辺、作中の彼はともかく「彼に憑依した自分」の感覚としては、嫉妬や羨望やルサンチマン、さらには独占欲のようなものまでもが入り混じってくるのがわかって(あくまでも倫太郎さんではなく自分がです)、もうドロドロに情緒をかき乱されました。もうなにもわからない。客観的にはどうするのが一番いいのかも、また自分としてはどうなってほしいのかも。とにかく逃げたい。なんか寝て起きたら勝手にいい感じなってくれてたらいいのに、みたいな。
 それ… 続きを読む

★★★ Excellent!!!

 大人になれない僕たちの物語であり、空という要素の取り入れ方もすごく美しい作品でした。
 キャッチコピーやあらすじに書いてあるどれか一文が気になったら是非読んで欲しいなと思います。
 何にもなれない自分と、何かになれる相棒などの関係性が好きな人にもオススメの作品です。
 超最高でした。

★★★ Excellent!!!

好きという気持ちや情熱との向き合い方に心を打たれました。
有名になったりデビューすることは成功の形のひとつだろうけど、ただただ純粋に楽しむってことも間違いなく成功の形。

社会やたくさんの人に期待されている、必要とされているっていうのは誰にとっても嬉しいことではありますが、身内でただただ楽しめているというだけでもそこはもうゴールでもあるのかなと。

「同じ場所で同じ空を見てゲラゲラ笑える奴が一人か二人いればそれでよかったんだ! だってそうだろ!」とはっきりと言葉にできるあくりちゃんは凄いなと思いました。