寅衛門「え~、作者が激務につき、日曜日にもかかわらず虫の息だそうです」
寅吉「虫って呼吸器官が腹にあるんですよね。腹に穴が開いてる感じで」
寅衛門「作者の腹には残念ながら気門はない」
寅吉「ありそうですよね」
寅衛門「そんな余計な話をしている余裕もなく、簡単に今の『翠雨』の舞台となっている隅田川の東岸、三囲神社についてちょろっとだけ」
寅吉「おや、この二枚の絵、ずいぶん画風が違いますが」
寅衛門「どちらも同じ場所を描いている。ほら、堤の下に沈むように立っている鳥居、これが三囲神社の名物だ」
寅吉「へ~、ほんとうだ、どちらの絵にもありますね!」
*下の方は拡大して見て下さい。あります(゚ω゚)
寅衛門「上が司馬江漢が描いたもの、下が松亭金水という作者が描いたもの」
寅吉「上の方がどことなく文明開化の匂いがしますね」
寅衛門「ところが、実は下の絵の方が年代的には新しい。司馬江漢が上の絵を発表したのが1783年、松亭金水は1850~1867年の間に『絵本江戸土産』中でこの絵を発表している」
寅吉「むしろ下の絵が幕末期で明治に近いんですか!」
寅衛門「『絵本江戸土産』の絵はデザイン的にかなり洗練されているんだが、司馬江漢の手法がいかに斬新だったか、よくわかるように比較してみた」
寅吉「で、この土手で修の字、転びそうになったんですよね」
寅衛門「作者、めちゃくちゃリアルな描写ができるぞう!とか息巻いていたが、取材で捻挫したのは作者だから」
寅吉「修の字は転んでないですもんね」
寅衛門「デート中だしな。……そしてその相手はあの藩主ではない」
寅吉「きゃー、それって浮気?!」
*時代背景だけじゃなくて人間関係も次第にヤヤコシクなってきました『翠雨の水紋』(
https://kakuyomu.jp/works/1177354054934988614)、明日更新の最新話は「羽代藩、みんなで墨堤に遠足に行くの巻」です!
*資料は国立国会図書館デジタルコレクションのパブリックドメインです。
三囲景
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1288359絵本江戸土産 10編. [8]
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/8369313?tocOpened=1