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物語が始まらない『安楽死キット』

こんにちは。
安楽死キットのご使用ありがとうございます。
表示される手順に従い、装置を装着してください。
装着後、国民番号、安楽死申請番号、氏名、生年月日をご入力ください。

 小学生の時、学校で買わされた裁縫箱みたいなこの機械によって、今日、僕の人生は終わりを告げる。
 画面に表示される手順を元に、装置を頭、耳、手首、指先に装着する。
 国民番号、安楽死申請番号、氏名、最後に生年月日を入力して「確認」ボタンを押した。

 ぽーん。間の抜けた音と共に、画面の一部が赤く色づいた。

生年月日が違います。

 一瞬、思考が停止した。
 入力を間違えたのか?もう一度入力し直し、確認ボタンを押した。

 ぽーん。間の抜けた音。

 表示されている生年月日は・・・・・・あっている。
 考えられることは、機械の故障か、あるいは

「僕の誕生日が違う?」

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