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物語が始まらない『プロジェクションマッピング』

 両親と父方の叔父と叔母、歳の離れたいとこと行った体験型料理店。

 真っ白のテーブルクロスの上にカトラリーがずらりと並ぶ。
 優雅な音楽と共に照明が絞られると、テーブルが水面へと変わった。父がテーブルをなぞると水面が揺れ大人たちの間に感嘆の声が広がった。

 投影された丸い葉っぱの上に早速料理が運ばれてくる。皿が置かれるたびに広がる波紋は隣の波紋とぶつかり消えていった。
 かぼちゃのスープは鮮やかなオレンジ色がとても美味しそうだった。スプーンを手に慎重に口へと運ぶ。

 ぽとり。

 僕の慎重さと反比例するように、僕と皿の間に小さなオレンジのシミができた。
 波紋が広がる。
 大人たちはこれにも反応するのか!と盛り上がっていたが、僕は溢れ出る波紋が罪を見せつけてくるようで、注目しろと言っているようでとても嫌だった。

 それ以来プロジェクションマッピングは嫌いだ。


2022頃 夢日記

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