皆様こんばんは。佐倉伸哉です。
先程『天正十年五月、安土にて』の最終話を投稿しました。
思っていたよりも添削作業が捗りまして、投稿開始から四日で完結させることが出来ました。
この作品の裏話について、書いていきます。今回はかなりマニアックな内容となっていますのでご注意を。
『天正』は戦国時代の元号になります。そして、この作品の設定から一月後の天正六月二日は―――本能寺の変が起きます。つまり、織田信長が甲州征伐から帰ってきてから京都に出発するまでの、信長が死ぬ前の一月にスポットを当てた作品となっております。……甲州征伐から安土に戻ってきたのは四月二十一日ですので、正確には“およそ”一ヶ月ですが。
戦国時代を題材にした歴史小説でありながら、合戦シーンは一切ありません。「信長が何を考えていたか」というのが一つのテーマとなっています。信長というのはカリスマ的存在だったり残虐な魔王だったり、書き手によって異なりますが、私自身はもっと人間味のあるキャラクターだったのでは? という前提で書きました。
信長の考えを引き出す役には森蘭丸を据え、人間味を引き出す役には濃姫を据えました。私自身様々な歴史小説を読んできましたが、自分の中ではこの配役が最初から頭にありました。
備中高松城からの使者に大谷吉継を選んだのは、“武勇に秀でつつも理路整然と援軍を乞う”という難しい役柄を託せるのは、秀吉お気に入りの小姓の中でも知勇兼ね備えた吉継しか居ない! と思ったからです。完全に個人の趣味です。
さて、嫡男の信忠ですが……偉大な父を持つ二代目というのは得てして苦労人が多いのです。歴史を紐解いても『初代は英邁、二代目は地味で苦労人、三代目は優秀』という系譜が多いです。例えば徳川家だと家康→秀忠→家光……といった具合です。信忠の評価も、信長の功績と比べるとかなり低いです。というか、目立った活躍をあまりしていません。しかし、人使いが荒く他者を見る目が厳しい信長が信忠を嫡子と定めてからずっと変えなかったというのは、それだけで信長から「有能」というお墨付きがあったからこそだと考えています。信長は子沢山で信忠以外に大勢男子が居たので、もし「使えない」と判断したら即座に首をすげ替える……というのは簡単にやってのけたと思います。
……話が長くなってしまいました。
そんな感じで、信長を中心とした人間模様を書かせて頂きました。かなり手直しは入りましたが、この作品を読んで「面白かった!」「歴史に興味を持った!」と思っていただけると、作者冥利に尽きます。
ここまでお付き合い頂き、真にありがとうございました。
佐倉伸哉