幟旗が立っていた。
「俺はここにいる」
そういう予兆というか、不思議な感覚は小さい頃から持っていた気がする。
11月5日は悪い日じゃないから
そう言ってくれた人がいた。
弟たちは泣き崩れたし、兄たちは涙を見せる前に姿を消した。
私や姉たちはどうしていいかわからずにとりあえずは料理を作ったり家の中を片付けることに専念した。
手を動かしていれば気がまぎれるから。
痛みも孤独もすべて誰にも渡したくない。
私も家族も同じような気持ちを抱いてこの数十年生きてきた。
家族にも言えなかったこともあった。それでも互いになんとか信じてきた。
細い糸が途切れなかった理由は今となっては明確に思い出せない。
あたしなんか割合、新参者だけど同じ気持ちになるには時間がかからなかった。
カラスは咽び泣き、声を枯らしては呆然と一点を見つめていた。
家成ちゃんはカラスと競うように家を鳴らし続けていた。
たった一言だけしか言えない。
言葉を失ったあたしが言えるのはたった一言だけだ。
「愛している」
付け加えるとしたら、「ありがとう」
それから、もう少しだけ色をつけるとしたら、
「これからも一緒だよ」
それからあの時のことも伝えたくて
「でも、その時は伝えて欲しかったのに、、、」
ああ、だめだ永遠に終わりそうにない。
そうやってあたしたちは日々を更新していく。
言葉は人の数だけ溢れていくし、思いは人の数だけ複雑になっていく。
それでいいと思えるように、もっともっと大人になれるように。
お誕生日おめでとう、11月5日、
落涙を許さないあなたの男らしさがあたしをまた男にする。
心配いらない、みんながいる。
役者は揃って、家族はみんな戻ってきた。
お陰様でね、ありがとう。