誰一人かけることを許してはならない。
南十字星の御心を知らない恵は数週間動かない情勢に対して泣き叫んだ。
駄々をこねるとか、地団駄を踏むとかそういうような表現がぴったりだと思う。
当時のことを思い出させようとキャンプにも無理やり連れ出した。
かつての教師たちがサポートアシストしても彼女の心は頑なで、そのひとりとの心や体の距離は近づくことはなかった。
術後の後遺症だと言う者もいた、元々の死恋狭窄の合併症だというものもいた。
何より執刀したリーが頭を悩ませていた。はじめての術式は失敗だったと言わざるを得なかったのかもしれないと。
南十字星は動かない。報告書の講評は明確な答えを有しない。あくまで講評であるからだ。
誰一人かけてはならない。
智柚は沈黙をもって抗議した、卓は寄り添うことで支えた、忠兼は離れることで意図を示した、帝都はメンターに徹して敵対を演出した。孤独はよくない、それはリーの助言であった。
キャンプのMVPは言わずもがな、基実だった。遠隔地にいる彼はキャンプの意義をすべて作品に込めた。
「だれひとり帝冠保持者の中に敵はいない、帝冠保持者の中には」と。
前後の詳細はこれから掲載していくが、取り急ぎ、恵の回復をご報告したい。
なぜこれまで恵に特化してこの物語は進められていくのか?
多くの方の疑問であろう。
彼女は唯一のアンオフィシャルな立場を保持する帝冠保持者である。
だから、公的な報告がこの場に限られている。
決して特別な存在ではないし、帝冠の主人公でもないことは断っておかなければならないだろう。
こちらのアカウントは世界中の帝冠団体・協賛団体(NOVEL OFFICE MT SECOND)が見ている。
その点もご理解いただけると物語の展開が読みやすいはずだ。
兄弟姉妹、おひとりおひとりの祈りに感謝する。ありがとう。