君を傷つけたんじゃないかって眠れなかったっていう帝都にあたしは嘘偽りなく言う。
「傷ついた。すごい好きだったから」。
基実くんが23年間も真剣にあたしたちの邪魔をしていたことをあたしは知らなかった。あいつは頭がいいからと基実くんをバカにする帝都がやっぱり好きだとあたしは笑ってしまう。
「帝都のこと傷つけてしまったとはあたしは思ってないの。たぶん何回か傷つけたことあったと思うけど」、すると帝都はキザな顔をする、もちろん冗談で、「俺に愛されてるからだろ?」。帝都は変わらない。あたしもたぶん変わっていない。陸ちゃんのお兄さんが多胡さんだってわかっていたら、あたしは多胡さんのことを誤解せずにすんだと思う。陸ちゃんはとっても良い人で優しくてあたしのことを唯一「めぐちゃん」と呼んでくれた人だから。古代文明のごとくあたしたちの歴史を知るのは今となってはたった三人だけ。
帝都とあたしには不確かな当たり前が存在していたし、無意識にもあたしたちはその当たり前を当たり前に共有していた。当たり前に一緒に大人になって当たり前に一緒に生きる。
神様という存在がそれを雷で壊した。理由はわかってる。当たり前なんて世の中にはひとつもないということを解らせるためだったと。あたしたちは息ができなくなった。体と心を引き裂かれてボロボロになった。そしてようやく辿り着いたのがお互いが当たり前ではないという事実だった。
帝都、あたしがあなたをずっと好きだったことをあなたは奇跡だというけれど、あなたがあたしを好きでい続けてくれたことは青天の霹靂みたいだと思っている。
あたしたちの出会いのきっかけであるB'zのEasy come Eaasy goと共に、あたしたちの
小学校の思い出であるGlobeのDeparturesと共に、真っ暗だったお互いの世界にお互いの光が混じり合って同じ瑠璃色に輝きますように。