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くろてんゲーム化エッセイ36.世界包括神話-エジプト(4)

お疲れ様ですの遠蛮です!

本日でエジプト編最終。ゲブとヌトの5人の子と、トート、アヌビスの7柱を紹介して終わらせたいと思います。それではさっそく。

・オシリス
 おそらくははシリアから来た穀物の神。古くはアンジェティという田園神と同一視され、その物質的象徴は切られたシリア杉。この神の名がオシリスに転化した理由も名前の意味もよくわかっていませんが、「眼の力」と解されることが多いです。豊穣神としてのオシリスは緩やかかつ着実に相殺儀礼の神と同化し、死せるファラオと同一視されるようになります。のちにラーとならんで全エジプトの王、統治者とみなされるにいたりますが、原初神話に組み込まれるとヘリオポリスの「九神」の一人としてゲブの子に……大地の神の子が植物と豊穣の神というのは自然なので……収まります。
 また、「初めの時」の人間は食人嗜好を持つ野蛮人だったので、オシリスはこれを教化して耕作と収穫を教えたとされ、神々を崇拝する方法と、そのために法を制作し、その仕事のために書記の神トートの助けを得ています。この事業を完成させた後、オシリスは世界の残余の血にも教えを広めるべく旅に出て、ありとあらゆる国の民にありとあらよることを教えたとされます。が、のちセト神の謀略により殺され、トート、ネフティス、アヌビス、ホルスの助けを得たイシスにより蘇生させられますが、この時すでにオシリスは死者の国の住人となっていたので、地上には戻ることなく死者の国の王としての王権を維持することになりました。このオシリスとセトの争いはかなり長くなるので端折りますが、興味があったら是非にとオススメできる神話です。
 一般的にはオシリスはイシスを妻に、ホルスを息子にした三位一体で崇拝され、中エジプトにおける崇拝センター、アドビスでは「西方人の筆頭者」と言われました。これはケンティ・アメンティウというアドビス本来の神の異名で、これまた死者の王を意味します。エジプト人にとってアドビスは伊勢神宮であったりメッカであったりガンジス川だったりするようで、すべてのエジプト人はここに詣でることを望んだとか。また、死せる王としての姿は牧人の杖と鞭を持ったヒゲ面のミイラ。

・イシス
 オシリス同様、もとは北デルタのセベントニス地方に独立した民衆神。オシリスと同じ理由でヘリオポリスの晩神殿に組み込まれ、かれの妹にして妻と呼ばれるようになりました。その名イシス(あるいはアセト)は「座席」を意味し、おそらくは王座の意。オシリスの死後に彼と霊的な結婚をしてホルスを生んだ、とされます。オシリス神話そのものの中での彼女の役割はホルス留守中の宰相であり、さして大きな意味のある神格ではありませんでしたが、むしろオシリス死後の活躍において人気と信仰を得ました。即ちセトに殺されたオシリスの死体を探し当て、復活させ、乞食に身を落としてもの雌伏の末息子ホルスにセトを倒させて、さらに敗者セトを許したということ、さらには息子ホルスを太陽にして至高の神ラーと一体ならしめた母神としてですね。
また彼女は「ヒケ」という魔術の使い手でもありました。すべての存在が二つ持つ名前のうち「真実の名」を支配するというもので、これによつてイシスはラーを凌駕したというお話は前述した通り。
 しばしばイシスは王冠を被った女性の姿で描かれます。またハトホル女神と胴体としてあつかわれるときは羽毛と牛の角をあしらった太陽円盤として表されます。

・セト
 おそらくはリビアから流れてきた神格。オシリス神話の敵役ですが、もともと信仰の範囲と言い熱心さと言いオシリスに匹敵できるものではなかったようです。これがパンテオンに組み入れられるとオシリスの弟ということになって互角の存在になり、ラー信仰と対立するようになります。神話李中で彼はラーの同一体であるホルストの闘争を主軸に描かれ、ホルスの出征の正統性に疑問を投げかける神でもあります。
 エジプトの諸神格の中でも群を抜いて邪悪かつ暴力的な破壊神であり、母の子宮から自らを引きちぎり、母の脇腹を破って生まれたとされ、目は赤く髪は赤く、エジプト人にとっての悪徳の色を帯びた存在とされます。
 上エジプトのファラオが下エジプトのラー信者より優勢であった頃はセトは「セト陛下」とラー以外の存在には与えられない損傷で呼ばれたほどでしたが、のちラーの継承者ホルスが成長し台頭すると両者の激突は不可避となり、ホルスはセトを去勢し、セトはホルスの片目をえぐりました。この神話からセトは日食と、欠けゆく月の象徴ともされます。両者の争いはラーに裁かれ、ラーはホルス優位の審判を下しましたが、セトの主張を棄却もしませんでした。なぜかというに、ホルスがラーの息子であると同時に、セトもそうであり、毎夜太陽の船で地平を超す際、敵(蛇アポピス)からラーを守る神の中で最も強力なのが好戦の神セトだったからです。しかしこの役割はのち、トート神にとってかわられ、セトは完全に不毛と邪悪の化身、暴風雨の神として最果てに追放されてしまいます。最終的にはかつて彼が斃した敵アポピスと同化される始末。セトは多頭の竜(ギリシア神話におけるテュポーン)、または野猪の頭を肩に乗せた逞しい人間の姿で描かれます。

・ネフティス
 ヌトの娘でセトの妻。セトの妻ではありますがその忠誠はイシスのもとにあり、愛情はオシリスに向けられていました。ためにセトとの間には一児ももうけず、オシリスをあの手この手で欺いてイシスと自分を混同させ、その密通の成果としてアヌビスを生みました。ただイシスの報復を恐れたネフティスは、生後間もないアヌビスを戸外に捨てましたが。アヌビスはのち、イシスの養子になりました。
 その後、ネフティスはイシスの最大の理解者、従者、保護者となり、おもにセトからイシスとイシス信者の民を守り抜きました。彼女の得意は変身魔術で、万物を意のままの動物の姿に変えることができたといいます。ネフティスはおもに、鳶の姿で描かれました。
・ホルス
 ナイル谷の侵入者が崇拝した隼神。もともと天空神であり、その両目は太陽と月。制服民族の主神であるだけに戦いと勝利の守護者とみなされ、王の称号の一つとしてホルスという名前はしばしば使われるようになります。さらに太陽神である彼は自然にラーと同一視されますが、民間信仰においてはオシリスの息子としてのホルス信仰が根強かったため国家宗教との間に対立が起こった時期もありました。ですが後世になると太陽のホルスとオシリスの子ホルスは混同されるようになります。太陽神系の神話においては彼はラーの息子であり、オシリス系の神話ではオシリスとイシスの息子ですが、このあたりの協会はあいまいなものになりました。どちらにしても、彼はセトを征服してラーの後継者となり、ラー・オシリスから王権を譲られてエジプトの主神になるという点はだいたい共通しています。

・アヌビス
 犬、あるいはジャッカルの頭を持つ神。ジャッカルは砂漠の動物であるゆえに砂漠=死者の国という連想が成り立ち、そこからアヌビスは死者の国、西の砂漠の神となりました。しかしこの役割も「西方人の筆頭者」の称号も、しだいにオシリスに奪われます。そしてアヌビスの権能は運命の予知と魔法と占い、というゲームに使えそうな分野に絞られました。のち、オシリスの来世と同一視されてオシリスの復活における相殺儀礼をつかさどり、これがのちのミイラ創造の範となります。遺体の防腐処置と仕上げを監督し、また彼は死者の魂の計量をつかさどる神にもなりました。彼の採決は直接トトとホルスとオシリスの承認を受ける重要なものだったといいます。

・トート
 朱鷺の頭を持つ神。数学と天文の神であり、魔法と占いの神。オシリスに文明の諸術を授け、イシスに多くの呪文を教えて彼女を「偉大な女魔法使い」に仕立てた神です。また書記の神でもあり、文字の発明者でもありました。「ラーの心臓」ともいわれ、太陽の船が昼夜の地平を超える際、蛇からラーを守る役割をセトから奪ったのもこの神。その魔術的存在感からギリシアのヘルメス神と同一視されることも多く、魔術書、とくにカバラ関係の書籍では「トート・ヘルメス・トリスメギストス(三重に偉大なトートにしてヘルメス)」といわれることがよくあります。

……今日は文章のみの投稿なので侘しいですが、あと10日くらいで広輪さまのイラストが上がる予定。ほぼ同じ頃に音声作品もたぶん、納品されるのではないかと思います。そういう武器が手に入るまで皆様に飽きられないようにするのが遠蛮の役目。一応、動画をTwitterにアップしたりしてはいるもののちゃんと役目を果たせているか心許ないですが、とりあえず本日これにて。

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