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くろてんゲーム化エッセイ23.世界包括神話ー5.メソポタミア編(3)

 いまの本分はゲーム造りなわけで、ゲーム開発だけやっとけばいいんですけども他に小説2本書いて英語だったり漢文の翻訳して、そんでお絵かきしてこのエッセイやらなんやら書いて、新しく資料読んでしたらほぼ1週間が飛ぶという現実にうちひしがれています、遠蛮です。最近新居購入が一段落したと思って小説1つ増やしたら全然余裕なくなったのはそのせいかと。いや、上記の分だけなら可愛いもんなんですが、ウチの場合家事全部とおかんの世話があるのでなかなか。最近おかんが年のせいか暴君化してまして、それを宥め賺すのも大変なのです。

 というわけで、ひとしきり愚痴も並べたところで世界包括神話。メソポタミア編の第3回、ギルガメシュ叙事詩中のウトナピシュティム(アトラ・ハシース)伝説のくだりです。

……

 エンキドゥが死んだ翌朝、ギルガメシュは固い決意を胸にしていました。世界の果てに住む、かつて大洪水から免れて生き延びただひとりの人間を訪ね、命の秘密を聞き出すことを。その人物の名を、ウトナピシュティムといいます。

 日が昇るとすぐに、ギルガメシュは旅立ちました。そして長い旅の果て、世界の果てに大きな山の入り口までたどり着きます。山門には重々しい扉があり、パピルサグ(半人半蠍)が、大勢で番をしていました。

 ギルガメシュは一瞬ひるみ、彼らのらんらんとした瞳に見つめられると気弱く目をそらします。しかしすぐに気を取り直すと、王の威をまといなおして前進しました。パピルサグたちも相手がただ者ではないとさとり、丁重に旅の目的を尋ねます。ギルガメシュが命の秘密を学ぶためにウトナピシュティムに会いに行くのだと答えると、パピルサグの頭は「その秘密が人間に明かされたことは古来一度たりとない。およそ人の身であの賢者にたどり着いたものはない。この先人の足ではとうてい通うことのできない道が続くのだぞ」と答えます。

「どれほどの艱難が待ち受けようと、ひとたび誓った以上私は怯まぬ」

 この言葉にパピルサグたちはギルガメシュ人知を越えた英雄性をさとり、扉を開くのでした。しかし扉の先のトンネルに踏み炒るや道は刻一刻と暗くなり、たちまち前後不覚の真闇に。闇に果てはないのかと思った矢先で突風が吹き、太陽輝く世界に戻ったギルガメシュは極楽のような世界で太陽神に迎えられ、この先を進むのはやめよ、お前の求めているものは、決してお前に見いだしうるものではないと諫めますが、ギルガメシュは聞きません。太陽神と別れて目的の道に戻ります。

 やがて一軒の大きな屋敷にたどり着き、ギルガメシュはここで案内を請いましたが、シドゥリというこの屋敷の女主人はギルガメシュがあまりにみすぼらしい姿をしていたため、気味悪い浮浪人と思い鼻先で扉を閉めます。これに怒るギルガメシュ。扉をたたき壊さんばかりに激しますが、シドゥリが窓を開けて浮浪人を用心する理由を明かしたので怒りを抑え、こんな姿になった今までの旅のいきさつを話しました。

 シドゥリかんぬきをはずしてギルガメシュを迎え入れ、二人は一夜をともにして語らいあいました。シドゥリはどうにかしてギルガメシュをここにとどめたく、旅を断念させようとします。

「ギルガメシュ、あなたが求めているものは人間に見つけ出すことのできないもの。なぜなら神は人間を作るに当たって、死をその取り分としてお作りになったのですから。ですから人間の取り分を享受なさいませ。食べて飲んで、幸福を求められなさいませ」

 しかしやはりギルガメシュの意思は変わらず、ウトナピシュティムの居場所はどこかとシドゥリに尋ねます。シドゥリはついに答え、

「老人は海の遠い果てに住んでいますが、その海は死の海であり、未だかつてそこを越えた人間はいません。ただ、私の宿にウルシャナピという男が居ます。この男は老賢者の船頭で、頼めば向こう岸へ渡してくれるでしょう」

 シドゥリはそういって船頭とギルガメシュを引き合わせ、ウルシャナビは死の海を越えるため1ダースほどの棹を用意するよう、ギルガメシュに求めました。ギルガメシュは言われたとおり用意し、二人はほどなく出帆しました。

 何日も航海するうち棹を使い果たし、ギルガメシュたちは遭難します。ギルガメシュが自分の衣服を帆にしたことで九死に一生を得、賢者ウトナピシュティムに見つけられて迎えられますが、ギルガメシュの問いに賢者の答えは

「貴方の求めるものは見つけ出すことなどできない。なぜなら永遠などこの世にはないからだ。すべての命に事柄に、取引も収穫も水も戦争すらも、時間というものは定められているのだよ」
「おっしゃるとおりではありますが、しかし貴方は若いまま、永遠の時を生きられているではないですか。その秘密を知りたいのです、お教えください」

 ウトナピシュティムの瞳に複雑なものが浮かびますが、やがて彼はほほえむと言います。

「よかろう、若い人。人の知り得ない秘密を教えて進ぜよう。神々の他に知るものはわしひとりの秘密を」

 といって彼は洪水伝説を語りはじめます。神々かが増えすぎた人間を根絶やしにしようと洪水を起こすことを考えたとき、心優しき全智の神エアが風を吹き鳴らして警告したこと、それを聞いたウトナピシュティムが箱船をこしらえ、家族と家畜を船に積み込んで船をアスファルトで固めたこと、洪水が来てたちまちに水かさが増し船を翻弄し、稲妻と大水は7日7晩続いたことを告げました。

 7日目に老賢者は世界の果ての山に乗り上げ、水が退いたかどうかを確かめるため一羽の鳩を放ちました。鳩は休む場所がなく、すぐに戻ってきました。つぎにツバメを放ちましたが変わりなく、さいごにカラスを放つとカラスは戻ってきませんでした。老人はそこで家族とともに船を下りようとしましたが、このとき風神が下りてきて風を一吹き、箱船はまた流され、水平線遙かなこの島にたどりついて神々から永遠にこの場に閉じ込められめ運命を与えられました。

 この話を聞いてギルガメシュは、ついに不死を求めての旅が徒労であったことを悟ります。ウトナピシュティムの不死は神々の恩恵(あるいは呪い)によるものだったのですから、後天的に知識ではどうにもできません。

老人は貴方の求めるものは「人間の側から手に入れることは決してできん」といい、語り終えます。休みなさい、ウトナピシュティムは言い、ギルガメシュはうとうととしてそのまま6日間、眠ってしまいます。起きたとき彼はちょっとうとうとしただけで眠ってなどいないと言い張りましたが、老人の妻が毎日一個ずつ焼いたパンが6つ並んでいるのを証拠に見せつけられて自分が時間というものに抗いがたい存在という時日を確認させられます。

帰郷の準備をせよ、というウトナピシュティムに、その妻は「彼を手ぶらで帰してはなりません。つらい思いをしてここまできた彼に、なにかお土産をしなくては」と言いました。ウトナピシュティムは「この海の底に一本の草がある。この草を手に入れて食べたものは、若さを取り戻すことができるのじゃ」そう聞くやギルガメシュは足に重しをつけて海に飛びこみ、バラのようにとげのある草をつかみ、おもりを外して波間に出ます。

船頭のウルシャナビが待っていました。「これが“若返りの草”なんだ。これを食べたものは皆等しく若返り、寿命が延びるという、ウルクに戻ってみなに食べさせよう、それで私の冒険も少しは報われるというものだ」

しかしウルクへ戻る途中、水浴びをしたいと言って着物を脱ぎ、出水に向かったギルガメシュ、彼の姿が見えなくなるやいなや一匹の蛇が現れて、薬草を持ち去ってしまいます、草を食べるやいなや蛇は脱皮して若返り、戻ってきたギルガメシュは大切な薬草ももはや手の届かないものとなったことをしって悲嘆に暮れ、泣きます。しかしすぐに立ち直り、これはすべて人の定めと思い直し、諦めてウルクへと帰還したということです。

……

以上。これにてメソポタミア編は終了と言うことで。カナーンの神話とかもあるのですけども、メソポタミアの主流ではないのでまあ、外しとこうかと。

このエッセイ、小説に換えて、改めて各神話ごと投稿し直した方がいい気もしてきました。遠蛮が歴史と神話にやたら傾倒する理由も、せっかくなので冒頭に付け足すようにして。まあ、無駄に自分を忙しくするのはよした方がいいですかね……。

2件のコメント

  •  お身体が心配です。あまり睡眠を取られていないとか。
     ゲームは外せない生活の主軸ですが、小説は休まれても良い気がします。
     確かにエジソンは遠蛮さんのような生活を続けてもそこそこ長生きをされましたが……。
     過労死なんて言葉があるくらいです、どうかご自愛を。お母様より先にはダメですよ!

     すぐに眠気が来るように、おれごんが催眠エッセイでも書きましょうか。ダラダラと数学教師がお経を唱えるような、抑揚のない盛り上がりのないものを。
  • 心配いただき恐縮でございます!

    実のところ最近多忙が過ぎるので、グラフを作って月曜は小説1のみ、火曜日はエッセイ・神話概論のみ、夜9時を過ぎたら執筆作業はやめて休憩……という具合に一日一つの仕事しかしない、と決めることにしました。1日2種3種とやっていたのを一つずつにすることでまあ、他の、ゲームの絵師さまや音響制作事務所さまとの取引やおかんの世話を間に入れたとしても1日の4分の1くらいは空きができて、仕事数が6なので週1日空き、そのぶん資料を読んだり遊んだりの時間もとれるだろうと。これでかなり楽ができるはずですので、ご心配をおかけしました、遠蛮は大丈夫です。

    とはいえ、過労死……。結構しゃれにならないかもですねぇ。遠蛮はやたらと痛み(肉体的にも、精神も)に強く……というか鈍く、平気な顔して動いてたのに壊れたときは手遅れという腎臓のようなタイプの人間なので。外見も中身も実年齢よりずいぶん若い(この年でまだ20代とか言われます。白髪は多いんですが、やたらと童顔かつ気弱げな顔つきなのでそう思われるのかと)と言われますけれども、まだ死にたくはありません。である以上、やはり若い頃のような無理はしないよう努めるべきでしょうね。もともと勤労精神あふれる人間というわけでもなかったはずなんですが、家を任されている責任ゆえなのでしょうか。

    それでは、わざわざお読みいただいた上に心配までおかけいたしまして、本当に有り難うございました!
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