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くろてんゲーム化エッセイ.18-元ネタとかネタバレとか

病院に行って肩の人工骨格メンテ、ついで郵便局で7月分の支払い、そしてラストは税理士事務所さまと回ってまいりました。まず相続税の課税は問題なし、ゲーム制作個人事業主への道は閉ざす必要なく突き進めそうと言うことで、機嫌良く博多駅バスセンターの紀伊國屋さんで「現代の孫子」ことドイツ国防軍戦闘教範やらなんやら10冊ほど買って参りました、遠蛮です。いや、10冊で5万近くかかったのはちょっと予定を超過なのですが、今日は気分が良いので無礼講です。

さて、世界包括神話もインド、イラン、ケルト、北欧とやってきたので次はメソポタミア→エジプトかなぁとは思いつつ、今回はちょっと離れて小説の方の元ネタとかネタバレとか、つらつら書いてみようかなと思います。くろてんという作品に関しては「すでにあった歴史の叙述」というスタンスで書いていますので、あらかじめ全ての情報を開示しても問題なし、別に痛痒はありません。とはいえ最終話だけ読みに来るかたもいるわけで、そういう方が分かっていても改めて読みたくなる、それくらい思わせる筆力が欲しいものです。

ではまず、主人公、新羅辰馬くん。名前は韓国の古王朝、新羅王家からとりました。新羅はそのまま姓にして、新羅の古名「辰韓」からとって「辰馬」(馬韓、辰韓、弁韓と三国鼎立状態があり、その中から「辰」と「馬」をとった感じです)。1幕終盤になって出てくる「昔の姓は伽耶」という設定ですが、これもゆえないことではなくて辰韓よりさらに旧い新羅のことを「伽耶」というのです。例えば「新羅琴で検索かけると「伽耶琴(カヤグム)」とか、そういうのが確認できると思います。

容姿はもう完全に遠蛮の好み。銀髪ロングを横で束ねて結い髪に、紅い瞳と華奢な体躯。これで女の子だったら自分は絶対に惚れるという、そういうキャラ性で造形したので見た目では全女性キャラ束ねても女装した辰馬君にかないません。中身を加味するとまあ、雫おねーちゃんが圧倒的に逆転しますが。魔王状態における黒翼の天使という堕天使的・ちょっと退廃的耽美派スタイルもまったくの趣味です。彼の美貌の称「珍魚落雁閉月羞花」を自分で描き上げることができないのが無念ですが、その仇はゲーム版で広輪様が取ってくださるのでまあよし。

性格は光武帝劉秀のそれにかなり近く設定。といっても劉秀にあんなばかたればかたれ言うガラの悪さはないですけども、敵だろうとモンスターだろうと殺したくないとか甘い理想を語りつつもいざとなると昆陽の戦いよろしくやたら度胸が据わったり、そのくせ自分が支配者の側に立つ時になってもあまり為政者らしくなく市井視点に立ってものを考えたりするあたりです。いざというところで押しが弱く、本当は后にしたい瑞穗さんを置いて借りがあるエーリカを皇后に立てるとかは完全に劉秀っぽい部分。まあこの三角関係の件がなければむしろ宋太祖趙匡胤に近いんですけども。優しすぎて精神疾患ぽく思い詰めるところとか。西洋の英雄だと似ているのはティムールとロベール・ギスカルドですね。あの二人も敵には容赦ないんですが身内に甘すぎるほど優しく、ロベールは何度も身内の反乱に悩まされながらも一度の粛正もしませんでしたし、ティムールはもと主君すじの窮鳥、トゥクタミシュを保護して後ろ盾になっただけでなくトゥクタミシュが自分に背くようになった後もやはり彼を殺してません。辰馬くんの決めぜりふの一つである「シャー・ルフ(王手)」はティムールの決めぜりふからの借用。すごい将棋好きだったらしいです、ティムール。

さて辰馬くんはこれくらいで、次は瑞穗さん。メインヒロインの中でもセンターを張る特別な存在。29年前、最初にキャラ設定を起こした当初から巫女さんにすることは決めてましたので、名字は神道っぽく「神楽」に坂をつけて名前は豊穣を顕す「瑞穗」。豊葦原の瑞穗の国、ですね。豊穣と言うことでお胸も大きく。とはいえ昔はバスト90でバケモノといわれる時代でしたから、121とかいうわけのわからんサイズまで振り切れたのは結構最近です。おかげで体重70キロを気にする自虐キャラに。この子もやっぱり結い髪好きな自分の趣味で束ね髪。

 性格とか内面のことを言いますと、後漢光武帝妃、陰麗華がモデル。主人公と想い合っていながら郭聖通(くろてんの場合だとエーリカ)に皇后の座を取られ、というのはそのまま陰麗華。陰麗華の場合はその後光武帝が郭聖通を下げて彼女を皇后にあげますが、くろてんの瑞穗さんはこちらもエーリカを退けて皇后にはなります。しかし現在書いてる話より約20年後、辰馬くん死後4年にして41歳でエーリカに毒殺されるので陰麗華よりも幸薄いですね。ちなみに「齋姫」という称号は六道慧先生の作品に「伽耶の齋姫」というのがあって、伽耶末裔・辰馬くんにお仕えする巫女、ならば齋姫であろうということでヒノミヤ姫巫女の長は齋姫の称をいただくことになりました。

臆病なんだけど聡明な天才軍師少女という設定は三国志やらなんやら大好き、というかもともと歴史好き。というかそれでメシ食ってた人。なのでこういう、実力あるのに性格的ハンデで発揮できないキャラを書きたかったのです。くろてんで兵法話やるとだいたい、読者さまが離れるというのがpvみると浮き彫りになってますけど、やめません。Pvからすると瑞穗さんが犯されたり瑞穗さんが辰馬くんを逆レとか、そればっか人気なんですが、そこが本領ではないので。くろてんは架空歴史小説です。エロは添え物……とはいえ、その添え物部分がこのさき、ゲームとしては一番重要になるわけですけども。

で、軍師としての瑞穗さんのモデルは明朝開国の元勲、中国最高最大の軍師「劉基(字は伯温)」というひとです。まあ漢の張良でもいいんですが。はっきりいって元より旧い中国史というのはほとんど信頼に値しません。これは以前何回かどこかで書いた覚えがあるので「こいつまたこれ書くのか」と思われるかもですが、大事なことなので何度でも。中国の史書、地理的に遠隔地がやけに近く書かれたりすぐ隣の州まで何ヶ月もかかったりとかありますが、特に数字的な問題で。40万人生き埋めとか10万人の反乱とか100万人動員とか。確実に100万の兵が動員されたと確実視されるのは隋煬帝の遼東遠征ぐらいで、2度目にしてその動員数を維持できなくなるのです、それくらい数を集めるのは難しく、それを糊塗するために誇張がしばしば使われるわけですが。

この誇張表現がくるりと現実的な数字になるのが元代からで、元という国はご存じの通りモンゴルによる征服王朝。それまで大げさな数字を書いて派手にやってた中国の史官が、リアリストで知られる元の上層部から「いい加減なこと書くな」と怒られたんだと思います。それ以降の元明清の歴史書読めばわかりますが、そうそう一つの戦で何万人も死んでません。中国が広いといってもあんなどんぶり勘定であちこち人が消えてたら国はたちまち滅びます。よって古代中国史はほぼ嘘というのは間違いないのがわかるのですが、そもそも明代以降の歴史書……というか24史の原本を読んで検証している方が少ないのですよ。近代中国史最大の決戦であるサルフの戦い、ヌルハチが明に事実上の引導を渡した一戦ですが、これですら明軍8万8550余人中の戦死者50%程度、4万5千人弱です(ヌルハチ側の損害に至っては800~2000。死者ではなく死傷者でこれ)。ロマンもなにもありませんが、戦国時代日本の戦争で全軍の2.5%損害を受けると致命傷なのです。農耕社会において耕作する労働力が足りなくなるので。それを考えると50%という損害は一地方が完全に滅ぶのと同義。

ついでに能力的なことを。時間を操るトキジクと心を読むサトリ、これは昔読んだ漫画から。まあ、かなり拡大解釈して「過去や未来を改編すら可能な力」にしていますけども。この能力の元ネタになってる漫画、ジョジョのザ・ワールドではありません。もっとずっと前の漫画のものなので現在ご存じの方はそういないと思うのですけど、いたらご同好、嬉しいところです。

お次は雫おねーちゃんこと牢城雫さん。ピンクポニテのエルフ娘。この人は作者的に言うと一番お気に入りだし動かしやすいしはっきり言ってひいきしまくりなんですが、キャラとして誕生したのはここ数年のぽっと出です。少なくとも10年はキャラについて設定やら突き詰めないと書き出せない遠蛮としては導入に踏み切るのが博打だったんですが、手応えとしては悪くなかったのです。「牢城」という名字は「城に牢される」で囚われの、深層のお姫様の予定だった名残がうかがえますが、実際今のバージョンになるとまったく囚われてません、たぶん全ヒロイン中一番フリーダムですし。くろてんの未来的なお話をすると辰馬君の中で瑞穂さんと雫おねーちゃんは双璧なわけです。けれど辰馬君が皇帝に上った時諸衆が擁立したのはすでに辰馬との間に子をなしていた瑞穗さんとエーリカ、雫おねーちゃんは政争を避けて下野しその後辰馬くんに会うことなく半妖精の長い人生を過ごすことになります。その後辰馬くんの死を経て、瑞穗さんもある事件で謀殺されると二人の息子をこっそりと引き取り育てるという、そういう世代を超えた愛情を注ぐ役。まだ書いてはいないシーンですけども遠蛮の中にはすでに確定された過去のお話としてできあがっているので、時間さえあればいつでも書けます。まあ今その時間がないわけですが。

雫という名前は単純に響きと字面で。そんな雫おねーちゃんは可愛くて書きやすくて話を回転させるのにも便利なのですが、ただ、46のおっさんがこの子のテンションでもの書きしてるとき、ふと我に返ってこっぱずかしくなることは多々あります。もの書きとしてはもっと振り切るべきなのでしょうが。

彼女の剣術に関しては居合いの林崎流……剣聖・林崎甚助の剣技……を参考にさせていただいています。抜くやいなや瞬時に手指、手首、肘裏、脇、喉元、目、瞼と急所を執拗に斬り上げていく剣技とか、そのへんですけども。遠蛮は専門にやったことがあるのは空手と、空手の手技向上のためのボクシングのみ、剣道は剣道部部長の友人に誘われつきあいでやった程度でして、なので剣術には詳しくない(実際日本刀を握った経験もない)のですがそこはなんとなく想像で。剣道は腕力が凄かった(昔は握力110ありました。今は右肩粉砕骨折でほとんど握力残ってませんが)ので、ぶん回してれば勝てる相手には勝つけど足捌きの上手い相手にはそもそも当たらないという素人芸で終わりました。なのでやっぱり、やったことがないものはリアルに書けないわけで、これに関してはおねーちゃんの強さを十全にはお伝えできてないんですが。

歴史的、というか神話的なモデルは確実にアルスター神話の冥界女王スカアハ。ク・ホリンに武芸と兵略のすべてを叩き込んだ師であり、恋人でもあった女性です。モデルがそんなせいで未熟な辰馬くんに比べて設定的に格段に強い。ゲームの初期設定レベルが辰馬5に対して雫12なので別格です。1章3幕にして「天壌無窮」の境地に達しますが、あれはゲームだと61レベルから身につく技で、大概のキャラはそもそもがレベル上限をそこまでに設定していないのでやはりおねーちゃんは蓋世。ただ2幕章跋で登場した「狼紋の魔人」ことカルナ・イーシャナとその仲間たち、彼らもまた「天壌無窮」に達した魔王狩りの男たちであり、雫おねーちゃんより経験値が高く、なので絶体絶命。この状況下で辰馬くんはアムドゥシアスにいますし、どう収集をつけるのかというところです。いえ、実のところ話はすでに出来ているのでどうするもこうするもないのですが。


そんな雫おねーちゃんにも問題があって。小説のほうはいいんですが、ゲーム版では鬼畜エロがあるわけなんです(メイン3キャラに純愛5枚、鬼畜6枚)。そこで瑞穗、エーリカ相手には鬼畜生になれるんですが、どうにも雫おねーちゃん相手だと無理。なんか知らんのですけども自分の中の鬼畜スイッチが入らないのです。強姦シーン書いてるはずが和姦になる……鬼畜ルートでこれなので、純愛ルートがどんだけ砂糖ぶちまけたものになるか推して知るべしです。情を殺す訓練をせねば。というかエロゲやってると好きな子ほど酷い目に遭わせたくなる欲求とか普通に沸くんですけどね、雫おねーちゃんは大概酷いことしても許してくれそうなので罪悪感ばかり募るのです。聖女か。

 ついでに体質の話も。魔力欠損症という体質は呪術廻戦の天与呪縛……ではなく、なんというかガンダムのニュータイプ設定がもとになってます。魔力依存の古い時代の人間から脱却した、魔力に頼らない新しい世代の人間、という感じで。これも作品のテーマが「神魔の支配」という旧世界からの脱却というところに決したので、そこから加速度的に「新世界の象徴」としての雫おねーちゃん像が固まりました。ちなみに遠蛮は年上・年下なら絶対年下好みなはずなんです。昔から友人たちにもそう語って憚らなかったのですが、雫おねーちゃんのシーンになるたびその信念が揺らぎます。あきらかに自分の脳内人気投票ぶっちぎりで一位なので。

ひとまずラスト、エーリカ・リスティ・ヴェスローディア。金髪ロングで、やっぱり毛先で束ねた結い髪。結局のところメインキャラ4人全員が結い髪に落ち着くということに。こっちは瑞穗=陰麗華に対する郭聖通として創出されたキャラですが、雫おねーちゃんほどではないにせよまあ新しいキャラです。遠蛮は19年前、朝日二次最終(当時三次とか四次ってなかったのです)まで行って玉砕落選なわけですが、その時期には影も形もありません。もしあの当時、作中に雫おねーちゃんとエーリカが揃っていれば通ってたんじゃないかなと思うのですよ。当時は辰馬、瑞穗、大輔、シンタ、出水と焔、武人、蓮純と新羅家家族……家族といっても今みたいなキャラ性あんまりなし……という具合に女っ気が瑞穗さんしかなかったのでですね。ついでにあの頃の文章を今読み返すと「あれ、こんなもん?」とも思ってしまうわけで、やはりあの当時のレベルでは最終落ちたのは順当だったろうなと。

で、エーリカに話を戻しますと、この子はポジションとしては郭聖通なんですけども、自身が有能な政治手腕をもつという点でどちらかというと漢高祖劉邦の后、呂氏の雰囲気です。呂氏というひとは若い頃から劉邦の浮気に厳しい、男尊女卑の中国古代には珍しい烈女なのですが、これが晩年になると寵愛を奪った相手を活かしたまま両目をくりぬき、両耳を削いで、空いた穴に水銀流し込んでトイレに放置し衰弱死させる。息子に面白い豚がいるから見て笑いなさいとこの政敵の哀れな姿を見せて、その凄惨に息子が精神失調起こしてこれまた衰弱死しても平気な顔してるようなばあさんだったわけです。この件、初めて読んだとき遠蛮も気分悪くして吐きましたけども。エーリカにもそういう役回りがあります。まあ、瑞穗さんの目をくりぬいて……とかそこまではさせませんが。あくまで部下に命じて第一皇妃瑞穗を毒殺、という程度です。これでも昔なじみの相手にそうまでするかね、というレベルではありますが、すでに第2幕まで書き終えたぶんのなかでエーリカの瑞穗さんに対する反感というか敵意はすでに臭わせてはいるので、分かる人はもう先が読めてるんじゃないかなと。まあ夫の寵愛が自分より相手のほうに多くて、自分の息子の地位を守りたい親心が働いたらこういう手段を考えるし実行するのがエーリカという女性です。けれどその後の彼女の治世というのは非常に帝国に国益をもたらすので、烈女ではあっても悪女ではないという弁護はさせてください。彼女の場合、単に情が濃すぎるのです。そんな晩年の彼女が反乱鎮圧の軍派遣を企図しつつ過去を回顧するお話を、現在ちょこちょこと執筆もしておりますので発表の際はどうぞ宜しくお願い致します。

なんか長くなったのでこのへんで。できれば朝比奈大輔、出水秀規、上杉慎太郎の三バカ大将についても書きたかったのですが、時間的余裕が。いちおう大輔からシンタまでの三人の名前は「アイウエオ順」の命名で、2幕で明かされることになったシンタの上杉家が山内家と姻戚関係というのは日本における扇ヶ谷上杉氏と山内上杉氏の関係になっています。では、とりあえずこのくらいで。

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