前巻の裏テーマの〝蛇〟に続けた訳ではないだろうが、本巻の前半は大蛇が登場する安珍・清姫の〝道成寺もの〟で編まれている。
なかでも萱野二十一の戯曲「道成寺(一幕)」の、不穏きわまりない雰囲気描写が素晴らしい。――事件から二十数年後。清姫の蛇淫の呪いによって、道成寺を擁する山から男だけが下山できぬという結界を張られ、善僧の誉れたかき和尚の魂もまた蝕まれ、女犯の罪を犯して堕落させられた――残された他の僧らに為す術はなく、悪霊の呪いが、山を蛇のように這いあがる。
黒木忍「壁虎(やもり)呪文」は前巻収録の「蛇神異変」と同じ大道破魔之介もの。やっぱりシリーズものだったのね。極彩色の裸の男女の恥戯を描いた壁絵がセクシャル。