超・有名怪談〝牡丹燈籠〟でまるまる一冊編まれたアンソロジー。元々は中国・明の話を日本を舞台に移し変えたもので、してみると巻末の岡本綺堂「牡丹燈記」が一番オリジナルに近いのかな。
翻案の際、女の死霊に憑かれて殺される主人公の青年の隣人夫婦なども加えられたようで、以後、様々な作家がこの物語を手がけてきたわけだが、その都度、各自が各自の解釈や新趣向を更につけ加えてきたのだろう。
なかでも、一度助かりかけた青年が結局殺されてしまう理由に、隣人夫婦の強欲(大西信行「怪談牡丹燈籠」)や若者自身の女への未練(長田秀雄「牡丹燈籠」)などとした工夫に、各作家の人間観や人生観が垣間見られる気がして面白かった。