残念ながら今巻はあまりピンとくるものが無かったのだけれど、強いて挙げるならば岡田耕平「悪鬼になったピリト」だろうか。題材的に珍しい気がするアイヌもので、東蝦夷シブチャリを舞台に、総乙名(酋長)シャクシャインとシャモ(和人)の庄太夫とが共闘してライバルのオニピシを滅して東蝦夷を統一、ついで不平等で差別的、強権的な圧政をしく松前藩へと戦いを挑む物語。結局は戦いに敗れ両者とも処刑されるのだが、残されたシャクシャインの娘で庄太夫の妻であるピリトの恨みが、松前藩の係累に様々な怪奇を呼びおこす。ベースにある異人種・異民族間の支配・被支配の問題を考えさせられる。