• ホラー

志村有弘 編『怪奇・伝奇時代小説選集(4)怪異黒姫おろし』読了~♪

 〝夜行さん〟と呼ばれる首なし馬を手にいれようと現れた馬買いと訪れた先の村一番の長者の物語――園生義人「馬喰とんび」。ラスト、馬買いの顔がいきなり馬に変貌したり、乱心した長者の刀で首を切られた己の馬を見て、〝ここに首なし馬がいますわい〟と嘯きながら去っていく、その奇想さが面白い。
 九鬼澹「疾風魔」はハードボイルドな復讐劇。労咳で文字通り血を吐きながら、ひとりふたりと手段も選ばず屠っていく、主人公の幽鬼のようなビジュアルが印象的。
 本山荻舟「妖女人面人心」は多くの異種婚姻譚が悲劇で終わるように本作も悲劇で終わる。死して白狐の姿に戻った心美しきヒロインへ、〝今の世には人面獣心の者が多いが、たとえ化生のものにせよ、人面人心というべきであろう〟と作中人物が贈る言葉に、作者の世の中への思いが読みとれて興味深かった。

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