社叢の風がひとつ裏返り、石段に二段分の血がすべり落ちる。
鳥居の影は長く、梢は高みで震える。
互いの距離は数歩。だが刃の間合いは、瞬きのあいだに零へ──。
この章では、熊野の夜が“名”と“理”を賭して収束します。
宗像槍・終の型が描く花は、春の祝ぎか、それとも終宴の焔か。
帷の向こうに差し出される指は、救済か、断罪か。
咲貴は三拍の命式で立ち、望は名を呼び、泰介は空虚の角を穂先へ移す。
誰が誰のために刃を振るい、何を手放し、何を抱きしめるのか──読者の皆さんの目で確かめてください。
待つ時間も物語の一部。
骨の鳴る音と、焔の桃の香りが、あなたの読後に微かに残りますように。
作品のネリネリにお時間をいただいています。
次話、冬馬が奮闘します。
乞うご期待!
宗像泰介、なかなかやります。
パパ強いね。
