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まだまだ暑い日が続いておりますがいかがお過ごしでしょうか。どうぞお体にはご自愛くださいませ。それでは感謝のSS贈らせて頂きます。



【悪役令嬢推しを愛でる マッティアSS】

マッティア・アクアマリンはジュエプリの攻略対象者達の中でも一番真面目だ。

暢気すぎる父親の反動のせいでこの性格になってしまったともいえる。

朝起きる時間から、夜眠る時間まで、きちんと管理し、狂うことを嫌う。

それは自室の様子からも分かるが、大切な本は種類別に分けられ、そしてアルファベット順に分けられている。

メイドが掃除で動かして、もし所定の位置と間違って戻せば、すぐに気付き注意する。

姑の嫌がらせの様な行動だが、怒っている訳では無く気持ちが悪いからだ。

そしてそんなマッティアは一週間の予定もほぼ決まっている。

週に二度ラファエル君の側近として王城へと向かい、そしてまた別で週に二度、スピネル侯爵家へと向かう。

そして残りの三日間は、自分の勉強の為に時間を費やすのだが、カメリアと出会ってから、そこに執筆活動という物が増えていた。


「ティア、ここの主人公のセリフもっと砕けた方が良いんじゃないかな?」
「砕ける? だがしかし……友人とはいえ王子に向ける言葉だぞ、ジェイ、それは不敬になるんじゃないのか?」

そんなマッティアの創作の手伝いをしてくれるのは、カメリアの弟であり、友人となったジェイデンだ。

ジェイデンはカメリアが妃教育がある日に、アクアマリン家に来てはこうやって小説への助言をくれる。

今書いているのは少年向けの小説で、王子と騎士の友情物語だ。

カメリアに薦められて書き始めてみたが、これがなかなか難しい。

そうジュエプリの世界では小説といえば恋愛小説がメイン。

少年が読むような冒険物はとても少ない。

いや、無いともいえる。

つまり前例が無いため、マッティアも全てが手探り状態なのだ。

カメリアには他に、海賊モノや、吸血鬼に変えられた妹を助ける話を書いてみたら?

とも薦められたが、今はそこまで進んではいない。

学園入学の勉強もある為、執筆時間が限られているという事もある。

だからこそ相談に乗ってくれるジェイデンの存在は有難い物だった。

「うーん……不敬では無いと思うよ。二人きりだし、僕達だってスピネル侯爵家にいる時はラファエル君と砕けて話しているしねー」

「ふむ……そうか……なる程……ではセリフは『貴方の為ならばこの命惜しくはございません』よりは『お前の為ならばこの命惜しくはない』の方が良いのか?」

「うんうん、その方が追い詰められて切羽詰まっている感じが出てるよねー。流石ティア、すぐに修正出来るんだねー」

ジェイデンとのこの時間がマッティアは何よりも好きで、何よりも楽しい時間だ。

朝からジェイデンはアクアマリン家に来て居るが、気が付けば夕方……なんてことはしょっちゅうだ。

夢中で本の話が出来る相手。

それはマッティアにとって友人以上の特別な存在でもあった。

そう親友……

ジェイデンはマッティアにとってまさにそれだった。

「そう言えばリアが早くティアの小説読みたいって言ってたよ」
「カメリアが?」
「うん、最初に貰った小説が面白かったから次の作品も早く読みたいんだって、何だっけ……うーん……何とかだって言ってたんだけど、難しこと早口で言うから忘れちゃった」
「そうか……」

カメリアが自分の小説を楽しみにしている。

それはマッティアには喜ばしい出来事だった。

マッティアの中でカメリアはジェイデンとはまた違った特別な存在で、今まで本の虫でしか無かったマッティアに、沢山の友人を作ってくれたばかりではなく、小説を書くという趣味まで作ってくれた。

それに誰かに恋する気持ちも……カメリアに会って初めて感じる事が出来た。

「良し、分かった。次回スピネル侯爵家に行くまでに、この小説を仕上げよう」
「えっ? 大丈夫? 明後日だよ?」
「大丈夫だ。ある程度出来ているからな。後は仕上げだけだ!」

ここで生まれて初めてマッティアは徹夜を経験した。

大好きなカメリアの為に早く小説を書き上げたかった。

カメリアが喜ぶ顔をどうしても見たかった。

それは自分へのご褒美でもあったからだ。

そして徹夜をし、書き上げた小説を持ってスピネル侯爵家にやって来た。

マッティアはすぐにカメリアにその小説を手渡した。

カメリアは笑顔で受け取ると、直ぐに小説を読みだした。

その間マッティアはジェイデンと何度か視線が合い、お互いに評価をドキドキしながら待った。

半分以上読み上げたところで、カメリアがマッティアに笑顔を向けてきた。

それも今までにないほどの良い笑顔で。

マッティアの胸は高なった。

「マッティアくーん! 最高ですわ! ジュエプリの二次創作! それもBL要素満載! これは売れると思いますわ! マッティア君! 販売に向けて直ぐにベンさんに相談いたしましょう!」

マッティアはカメリアの言葉の半分以上理解できなかったが、それでも喜んでくれていることは良く分かった。

自分の作品がカメリアを喜ばせる。

徹夜した甲斐があったとマッティアも喜んでいた。

それからというもの、マッティアの四角四面な生活が少し変わった。

夢中になると寝食を忘れてしまう。

そんな青年になった。

それもどうかと思うのだが、本人が夢中になる物を見つけ、楽しんだ生活を送ることが出来ているので、それもいいのではないかと思っている。

マッティアの創作活動はまだまだ続く。

そう、カメリアが読み続けてくれる限り……

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