こんばんは、白猫なおです。(=^・^=)
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※元聖女様は貧乏男爵家を立て直す! 「あなた達しっかりなさいませ、自分の人生は自分で切り開くものなのですよ」SSです。
少しネタバレ含みます。気になる方は204話後にお読みくださいませ。
【シェリルの趣味友】
元大聖女のシェリルは、幼いころからセラニーナに憧れていた。
小さな頃はちょっとやんちゃで、ちょっと攻撃的で、ちょっと短気な美少女だったシェリルは、実家の問題児でもあった。
だがシェリルに聖女の素質があると分かると、両親は掌を返したようにシェリルに優しくなった。
そして家の為にと、売られるように大聖女神殿に送り込まれたのだが、シェリルはそこで当時大聖女だったセラニーナの美しさに一目惚れした。
この美しい人を私が護らなければ!
と、幼いながらにシェリルはそう思ったのだ。
リチュオル国では聖女見習いとなると、国から祝い金が渡される。
その為貧乏貴族だったシェリルの両親は、そのお金(祝い金)目的でシェリルを大聖女神殿に連れて来たのだが、実家で放置されていたシェリルにとっては、それは幸運でしかなかっただろう。
だが、神殿で暮らすようになっても、とにかく正義感が強く、わんぱく令嬢のままだったシェリルは、自分らしく振舞う事が出来ない、大人しい女性として振る舞わなければならない、窮屈な聖女見習いの修行をどうしても受け入れる事が出来ず、事あるごとに大聖女神殿を抜け出し、街を歩いては悪い奴らを見つけ、そしてやっつけると憲兵所につきだしていた。
セラニーナの住む街を自分が守ってみせる! と、そんな思いもあったのだろう。
まだ幼いシェリルはこの時自分の力を過信していたのだ。
自分最強。
これまでの戦いで負け知らずだったシェリルは、そう勘違いしていたのだ。
そしてそんな事を続けていたある日、遂に大勢のガラの悪い者たちに囲まれてしまった。
自分はここで死ぬのだろう。
幼いながらもシェリルはそう覚悟した。
自分はセラニーナ様を少しは守れたのかしら?
ちょっとはセラニーナ様のお役に立てたのかしら?
果てしなく続く戦いの中、シェリルが自分の人生を諦めかけたその瞬間、そこに颯爽と現れたのは、聖女の中の聖女と呼ばれ、戦いとは無縁の存在だと思われていたセラニーナ・ディフォルト、その人だった。
「私の可愛い娘(弟子)に手を出そうとするなんて、誰であろうと許しませんことよ!」
美しく、上品で、そして完璧な淑女でありながら、セラニーナはいとも簡単にガラの悪い男たちを片付けていく。
その強さはもう人間離れしていて、異次元とも呼べるレベルの物だった。
例えドラゴン10体が襲って来ようとも、このセラニーナには勝てないだろうと、シェリルはそう思った。
そしてシェリルはそんなセラニーナの姿に、自分の理想を見つけた気がした。
こんな素敵な女性になりたい!
私もセラニーナ様のように強くなりたい!
聖女の中の聖女に、私も絶対になってみせる!
この日の事件はお転婆だったシェリルが、淑女な大聖女を目指すきっかけとなる出来事だった。
そして時は経ち、シェリルは誰もが認める立派な大聖女となった。
セラニーナの後継者。
いつしか自然とそう呼ばれるようになっていた。
大人になったシェリルは普段は完璧な聖女でありながらも、自身の体と魔法力を鍛える修行に手を抜く事はなく、淑女の鏡と呼ばれるようになった今でも、その拳に陰りはない。
今度こそ本当の意味で、セラニーナ様のお役に立てるようになれた。
力でも魔力でも聖女らしさでも、やっとセラニーナに追いつけた。
シェリルが自分自身にそう自信を持てた矢先、残念ながらセラニーナは天に召されてしまったのだ……
憧れの女性を亡くしたシェリルの落ち込みようは物凄いものだった。
それは、ベランジェやアレクがシェリルを元気づけようと、わざと失礼な言葉を発しても攻撃を仕掛ける事が出来ない程のものだった。
自分が目指す女性がこの世から居なくなってしまった……
憧れの女性にもう二度と会えなくなってしまった……
恩返しが何も出来なかった……
人一倍セラニーナに憧れる思いが強かったシェリルのショックはそれはそれは大きなもので、暫くの間大聖女の仕事も碌に手に付かない程だった。
だが、ある日突然セラニーナは、いや、ニーナは帰って来た。
そう、あのセラニーナは、ニーナとして生きていたのだ。
それもとても可愛らく、聡明で、なにより半端ない強さを相も変わらず持ち合わせていた。
とても幼い少女とは思えない魔法力と、淑女らしい笑みを浮かべながらの攻撃力。
大聖女を引退したシェリルは、いつしか幼いニーナの姿を見る事が、何よりの楽しみとなっていた。
そしてそんな楽しい生活を過ごす中で、ニーナの魔法力に同じ様に憧れている人物と偶々話す機会があった。
その人物はシェリルがまだ学生時代からの顔見知りで、ベランジェやアレクの友人枠として認識していた人物だった。
子鹿のような顔付きをしていて、学生時代は異性として意識することなど一度もなかった相手でもある。
だがニーナと一緒に王城へと足を運ぶようになり、自然とその人物と会話する機会が増えた。
「ニーナ様の魔法陣は神の領域です!」
「セラニーナ様の美しさと聡明さを失う事なく、その上でニーナ様は可愛らしさまで持ち合わせた天女のような素晴らしい女性です!」
「ニーナ様の魔法は無敵です! 天才です! ああ、あの森での戦いも是非お側で拝見したかった!」
その人物とニーナの素晴らしさを話し合うと、まるで魂をシンクロしているような、自分の心の声を代弁してくれているような、不思議な気持ちになった。
そしていつしか心友のようだとも感じるようになった。
シェリルはその人物と自然と手紙のやり取りをするようになり、ニーナについて毎日その人物に報告するようになった。
それが楽しくて、嬉しくて、仕方がなかった。
出来たら毎日顔を合わせニーナの武勇伝を語り合えたら良いのに……とまで思うようになっていた。
それはどうやら相手も同じ気持ちだったらしく、ある日ニーナの魔法陣の素晴らしさを二人で語り合っていると、ふいに彼から想いを告げられたのだ。
「シェリル様、私はセラニーナ様に憧れ、今は天使と呼ばれるニーナ様に憧れております」
「ええ、存分に存じておりますわ。私と同じ気持ちを貴方は持っている……魂の心友、そう思っておりますもの……」
シェリルがそう答えると、子鹿顔の男は笑顔で頷き、そしてシェリルの前に跪いた。
胸のポケットから二輪の白い花を取り出す。
それはニーナが育てた同好花(どうこうか)という不思議な花だった。
毒薬にも薬にもなるセラの森でだけ咲く美しい花。
花言葉は、死んでも離さない、盟友、そして心友だった。
「私は自分の魂の叫びと共鳴出来る女性は貴女しかいないと思っております。どうか私を貴女の傍におき、ニーナ様のお話を永遠にお聞かせ下さい!」
「まあ……とても嬉しいですわ……ですが、貴方はこの国の宰相。ニーナ様のお傍にいらっしゃるのは難しいのではなくって……?」
小鹿顔の男性は、強力なパンチを繰り出す事が出来るシェリルの白く美しい手を取ると、リチュオル国の宰相らしい笑みを浮かべニヤリと笑った。
年齢よりも幼く見えるその顔には、絶対的な自信があるようだった。
そう、セラニーナの弟子になりたいと恋焦がれ……
なのにもう会えなくなってしまったと、夢を諦めかけていた宰相が……
セラニーナに再び会え、ましてやこれから益々成長するであろうニーナを前にして、何も行動しない筈がない。
いつの間にかしっかり後継者を育て上げ、いつでもニーナの側へ向かえるように準備していたのだ。
それもシェリルという心友と、”ニーナへの愛を一緒に育む” という新しい夢まで手に入れて……
「シェリル様、陛下の事もこの国の事も何も心配ございません、宰相であるこの私が完璧で鉄壁な布陣を引いてございます。この国は今後も何も問題ないことでしょう」
「まあ、それでは、貴方も本当にベンダー領へ来る事が出来ますのね?」
「はい、すぐさまニーナ様のお傍に……貴女と共に支えるために……どうか私をニーナ様を愛してやまない貴女の相棒にして下さい。”ニーナ様愛” を貴女と永遠に語り合えるのは、この私だけだ」
「ユージン殿……」
「どうかシェリル……色よい返事を……愛しています」
「ええ……私も……愛しておりますわ。この命ある限りニーナ様を共に愛し抜きましょう……」
二人は ”ニーナを愛する同士” として永遠の愛を誓った。
それは自分の恋心よりも、ニーナへの愛が勝る夫婦が誕生した瞬間だった。
これによりベンダー男爵領は益々発展していくのだが、それはまた別の話だろう……